柔道・野村忠宏の引退会見全文3「康介と対面した時は」
瞬間の体の動きっていうものが自分の中で失われていた
朝日放送:えらいまた、試合のほうに戻っちゃうんですけど、実際ものすごい、試合中も痛かった感じなんでしょうか。 野村:いや、それほど、それほどというかあまり痛みは感じなかったです。試合前日、ドクターと話をしながら、試合前日に右膝と左膝と右肩の関節内に痛み止めの効果、消炎効果のあるステロイド注射っていうものを打って、試合が始まる2時間ほど前にボルタレンっていう痛み止めの座薬を入れまして、まあまあ、そういうもう、本当に最後は痛みを感じないように、なるべく痛みを感じない状態で試合をしたいということで、相当ドクターにも思いを入れて、そういうことで薬、注射をしていただいて。だから痛みで負けた、痛みで自分の柔道ができなかったと、そういうことはなかったですね。 やはりそういうのを常に持ちながら試合を迎えましたから、普段の練習をやはりその、今までは試合に勝つためにすべきこと、何をしなきゃいけないのかと。ただ単に努力するんじゃなくて、試合に勝つために必要な努力、正しい努力っていうのは何かって、そういう勝負に徹した努力っていうのを心掛けてきたけども、結局、体がこういう状態で薬を飲みながら、注射を打ちながらなんで、勝つためにすべきことじゃなくて、今できること、今この状態でできることを積み重ねるしかない。そういう状況になって、やれることっていうのも本当に少なくなってきて、もう勝つための積み重ねができなくなるという、そういう状態で結局、試合に臨んだんで、やっぱりあれが限界だなと。 柔道っていうのはもちろん技術を見たり技をつくって、体力をつけて柔道をつくり上げていくんですけども、やはり最後は組んだときの感覚であったり、その瞬間、零コンマっていう中での一瞬の反応なんですね。その肉体の下で、体のけがっていうので積み重ねができなくなった、そういう状況でその零コンマ何秒っていうその瞬間の体の動きっていうものが、やっぱり自分の中では失われて、反応できなかったですね。