自民党本部＝東京・永田町（鴨川一也撮影）

自民党が次期衆院選への準備を加速している。石破茂首相（自民総裁）は衆院選を「15日公示、27日投開票」の日程で実施する方針で、公約づくりが急務となっている。首相は先の総裁選で「アジア版NATO（北大西洋条約機構）」の創設などを掲げており「石破印」の政策がどこまで公約に反映されるのかが注目される。 【イラストでみる】石破茂新総裁はこんな人 「公約づくりが一番大変だ。現在、小野寺五典政調会長の下で突貫工事中だ」。自民幹部はこう語る。憲法改正など公約の大部分は前政権から引き継ぐとみられる中、首相の持論をどこまで盛り込むかが焦点となる。 首相はアジア版NATOについて、東アジアにおける「集団安全保障」の枠組みだと位置付ける。ロシアによるウクライナ侵略に触れ、「ウクライナはNATOに入っていない。だからNATOは守ろうとしない」などと問題提起していた。 もっともNATOは集団的自衛権の行使を規定。日本では集団的自衛権の全面行使が違憲であり憲法改正か政府解釈の変更が必要になる。首相は総裁選で日米地位協定の改定も訴えたが、米国側が難色を示す。自民中堅は「首相は理想を語っているだけだ」と指摘し、いずれも公約への反映は不要との見方を示した。 首相が総裁選で主張した「防災省」設置も党内から異論が相次ぐ。首相は今回の人事で側近の赤沢亮正経済再生担当相に防災省の前身となる防災庁設置の準備担当を兼務させたが、総裁選では「屋上屋を架すことになる」（小林鷹之元経済安全保障担当相）などと他候補から反論された。 「石破印」の政策は党内で十分に議論されておらず、公約に盛り込めるのは「せいぜい理念くらい」（自民関係者）というのが党内の相場観だ。首相周辺も「総裁選では理想を掲げ、首相になれば堅実にステップを踏んで進めていく。一気に実現できるものではない」と説明した。（今仲信博）