海外から「帰国できない!」事態も 前払いビジネスで相次ぐ消費者トラブル、被害にあわないために持つべき「視点」とは【ニュース深掘り】
後を絶たない「前受け金ビジネス」の消費者被害
良いサービス、人気のサービスを受けるために、消費者が前払い金を払うケースはよくある。しかし、そのサービスを受ける前、あるいは何回かにわたってサービスを受けるために回数券を買ったのに、回数券を使い切る前にサービスを提供してくれる事業者が倒産してしまうケースは後を絶たない。こういった倒産は、取引先業者が損害を被るのはもちろんだが、それ以上に消費者の被害が大きくなってしまうことが多い。
過去には旅行会社が倒産、「海外旅行から帰国できない」事態も
昨年8月に名古屋市内の結婚式場運営(株)グラヴィスが破産し、挙式予定だったカップルが式を挙げられなくなるといった被害が起きて話題となった。また、12月にも美容皮膚科クリニックが破産。前払いをしたのに施術が受けられない事態となり、その被害者は1500人程に上ったとみられる。その他にも美容院の回数券を購入した後に運営会社が破産した事例もあった。こうした前受金を受け取ってサービスを提供する事業者が経営破綻した際、最後まで何とかサービスを提供するために頑張っていたと感じるケースがある一方で、杜撰な経営だったと疑わずにいられないケースも散見される。 その典型的な事例として思い出される倒産に、2017年に破産した旅行会社「てるみくらぶ」(東京都)がある。倒産時の負債は約150億円に上る大型倒産であったこともあるが、同社の倒産では負債額の大きさよりも、旅行を予約していた消費者、あるいは海外旅行に既に出発していた旅行者が帰国できないといった混乱が生じたことがTVニュースや新聞などに報じられて社会的な問題となった。そして、倒産後には同社が決算を粉飾していたことが明らかとなり、代表が粉飾決算によって不正に融資を受けたとして詐欺で逮捕される事態となった。 TDBが入手した金融機関に提出されていた決算書と、破産申立書に添付されていた専門家によって作成された実際の決算内容とでは、いくつかの勘定科目に違いが見られたが、一番乖離が大きかったのは「前受金」だった。実際には旅行の予約者から預かっていた前受金が約70億円もあったのに、金融機関提出の決算書には約18億円と記載されており、52億円程が簿外となっていた。預かっていた前受金の多くが社外に流出しており、その行方が大きな関心を集めたが、結局債権者にはほとんど還元されなかった。 旅行会社であれば旅行者が宿泊した旅館やホテル、航空会社に対して、旅行者から受け取った前受金から旅行会社が支払いをする形になるが、これほど多額な資金流出があれば早晩経営破綻することは目に見えていたと考えられる。しかし、倒産直前まで積極的な新聞広告で旅行者を募っており、悪質な粉飾として経営者が罪に問われることとなった。