海外から「帰国できない!」事態も 前払いビジネスで相次ぐ消費者トラブル、被害にあわないために持つべき「視点」とは【ニュース深掘り】
脱毛ビジネスの破綻劇から見る、前受金ゆえの“甘い判断”
前受金ビジネスの危うさは、顧客から預かったお金は将来の支出に回るものだという意識が薄れてしまうことにあるようだ。例えば、会員制のエステなどでは、新規会員を増やせばそれだけ前受金が一時的に増えることになる。当然、前受けで施術料を受け取っているので、後に施術をした際、そこで代金の回収が生まれないため将来経費として前受金のなかで一定程度は手元に残す必要があるだろう。それを身の丈に合わない投資などに使ってしまうと、新規会員の獲得が頭打ちになれば資金繰りが悪化していくことになる。 2023年12月に破産した都内の美容脱毛サロン運営会社(株)エムシーネットワークスジャパンのケースでは、倒産時には会員が約10万人に上り、未経過のサービス提供分が金額ベースで16億円にもおよんだ。倒産の要因は新型コロナによって対面営業が行えなくなったことや医療脱毛への消費者ニーズの変化が挙げられ、業績が悪化するなか社会保険料の滞納も追い打ちとなった。 しかし、そこに至るまでの積極的な店舗展開や宣伝広告への負担も要因だったとみられている。この脱毛サロン業者は、2012年当時に26店舗だったものが、2019年には56店舗を運営するまで拡大。その後、売り上げが落ち込むと共に収益も悪化し、2020年には営業利益段階から赤字に陥った。 そうしたなかでの2022年の決算書をみると、借入金はゼロで前受金が70億円計上されている。積極的な店舗展開は前受金のなかから充てられていたことが想像できる。一方で、70億円の前受金があるにも関わらず、期末の現金預金は6億円弱と、前受金との間に64億円もの乖離がある。これでは、新規会員を獲得し続けなければ資金繰りがつかない状況だったことが容易に想像できる。2023年の決算書では前受金が45億円まで、現金預金も1億円強にまでそれぞれ減少して、会員獲得が頭打ちの状況が続き手元資金が次第に減っている状況だったことが分かる。