【米国株ウォッチ】ファイザーは競合と比べ割安、買収戦略やバイオへのシフトにも注目
米大手製薬会社のファイザー(ティッカーシンボル:PFE)は米国時間12月17日、2025年度の業績予想について楽観的な見通しを発表し、株価はその後約5%上昇した。その見通しでは、収益が610億ドル(約9兆5400億円)から640億ドル(約10兆100億円)の範囲に、調整後のEPSが2.80ドルから3.00ドルの範囲になると予想されている。それに対し、市場予想はそれぞれ630億ドル(約9兆8600億円)、2.94ドルと比較している。ファイザーの経営陣はまた、ワクチン懐疑論者と言われるロバート・F・ケネディ・ジュニアが米国保健社会福祉省(HHS)の責任者に就任したにもかかわらず、来年のワクチン政策に意味のある変更は期待できないと述べた。 直近、ファイザーの収益と利益率が低下しつつあることが株価の重荷となっている。ここ数年、新型コロナウイルスのワクチンに対する需要が落ち込んでおり、同社はそれにより失った収益の穴を埋めようとしている。同社は企業買収による収益成長に目を向け、ここ2年ほどでSeagen、Global Blood Therapeutics、Biohavenなどを買収した。それでも、投資家に楽観的な見方を与えることはできず、株価は下落基調にある。 ファイザーにとって2024年第2四半期は、収益の減少が止まり、収益と利益率の改善が期待できるターニングポイントであったと私たちは見ている。新型コロナウイルス関連製品を除くファイザーの収益は、ここ数四半期の間2桁成長を続けている。ビンダケルとアブリスボが好調で、エリキュースの継続的な成長が最近の全体的な収益増に貢献している。ビンダケルによる収益は2024年9月までの9カ月間で前年同期比66%増の39億ドル(約6100億円)、エリキュースによる収益は同8%増の55億ドル(約8600億円)であった。直近1年間の総収益は594億ドル(約9兆2900億円)で、2023年の585億ドル(約9兆1500億円)をわずかに上回っている。 ファイザーは大幅なコスト削減にも取り組んでおり、今年末までに40億ドル(約6300億円)のコスト削減を目標としている。この計画には、大規模なレイオフと研究開発費の削減が含まれる。これとは別に、同社はバイオ医薬品へのシフトも進めている。バイオ医薬品の販売価格はより高く、これによりファイザーの利益率が高くなる可能性もある。 直近3年間におけるファイザー株の年間リターンはS&P500種株価指数と比べかなり不安定だ。2021年における年間リターンは約67%、2022年はマイナス10%、2023年はマイナス41%であった。 ファイザー株は直近上昇しているものの、同株はいまだ過小評価されていると私たちは考えている。米国時間12月20日現在の約26ドルという株価は、2025年の予想利益である2.94ドルの9倍以下という水準だ。これは過去5年間の平均PER(株価収益率)である14倍よりも低い。また、このPERは同業他社と比べてもはるかに低く、メルク・アンド・カンパニーは11倍、アッヴィとジョンソン・エンド・ジョンソンは14倍である。私たちは、今後数年間の内にこのバリュエーションの差がファイザーにとって有利に働くと考えている。私たちが算出したファイザーの目標株価は36ドルで、これは現在の水準よりも約40%低い水準だ。
Trefis Team