社会人の勉強は「仕事中」にやれ――堂々とそう言えるワケ
ポータブルスキルを2つのスキルに分類すると
【仕事のし方】 ・現状の把握 ・課題の設定方法 ・計画の立て方 ・実際の課題遂行 ・状況への対応 【人との関わり方】 ・社内対応 ・社外対応 ・部下マネジメント 20年近くコンサルタントをしてきた経験からして、このまとめ方は素晴らしいと思う。とても重要な要素が抜き出されていて、これらのスキル向上が自分自身の市場価値(マーケットバリュー)を高めることになるに違いない。 ただし、表現が分かりづらいとも思う。抽象的すぎて何をどうしたらこれらのスキルが身に付くのかがイメージができない。従って本書の中では以下のように表現を変えたい。
「コンセプチュアルスキル」と「ヒューマンスキル」
・「仕事のし方」=コンセプチュアルスキル(定義:複雑な事象を概念化して本質を把握するスキル) ・「人との関わり方」=ヒューマンスキル(定義:交渉や調整の際に円滑なコミュニケーションをとれる対人スキル) このように「コンセプチュアルスキル」と「ヒューマンスキル」と名称を改め定義することで、何をどう勉強したらいいのか具体的なイメージを持てるだろう。この2つのスキルに着目する最大のメリットは、将来の仕事だけでなく、目の前の仕事にも役立つということだ。
社内制度を活用しないのはもったいない!
「仕事中勉強法」3つ目のポイントは、「徹底して社内制度を活用すること」だ。 実務で役立つ研修などは誰でも受講する。なぜなら、その知識や技能を習得しないと自分に与えられた業務を遂行することができないからだ。これらは「マスト(Must)」の勉強といえる。 経理担当は簿記の勉強をしなければならないし、システムエンジニアはシステム設計やプログラミングを習わないと仕事ができない。 一方、先述したコンセプチュアルスキルやヒューマンスキルは「マスト(Must)」ではなく、どちらかというと「ナイストゥハブ(Nice to have)」の勉強となる。「あればよい」けれど「必須」ではないと受け止められがち。 なので、「『ロジカルシンキング』の研修を受けてみないか?」「『マネジメントスキル』をゼロから学べる講座があるが、どうだ?」と会社からすすめられても、 「時間があればぜひ受けたいのですが、最近忙しいので……」 などと言って断る人が実に多い。私自身がこういった研修の講師をしているので、この点は肌で感じている。 しかし、この姿勢は極めてもったいない。「忙しいから研修を受けられない」ではなく、「研修を受けるために、仕事のダンドリを整えよう」「日ごろから上司と対話を心掛けよう」と意識すべきだ。 その意識だけで、ポータブルスキル、ヒューマンスキル向上に役立つ。 せっかく手厚い社内制度があり、活用できる権限があるのにもかかわらず、まるで無関心の人はとても多い。以前、会社を辞めてフリーランスになった人が「独立してからは勉強するのにもお金がかかる。会社員のときにしっかりと社内制度を活用しておけばよかった」と言って、とても後悔されていた。 また、社内制度を活用すれば堂々と業務時間内に勉強できる。もし時間外であったとしても、それは残業として見なされる。 社内制度をよく知らないという人は、今すぐ確認したほうがいい。社内制度を利用せず、自分のお金で、しかも業務時間外にオンラインサロンに参加したり、コミュニティーに所属して時間を浪費したりするのはやめよう。 「楽しむこと」が目的ならいいが、純粋な勉強、スキルアップにはつながらない。勉強は原則、一人でやるものだから。