豪雪地に押し寄せる30万人観光客 「鬼滅」でも話題の地が来客制限
大正ロマンを感じる景観が人気で、漫画「鬼滅の刃」に登場する「刀鍛冶(かじ)の里」に似ているとしても話題になった山形県尾花沢市の銀山温泉で、オーバーツーリズム(観光公害)が深刻となっている。 【写真】雪景色が映える温泉街は観光客に人気だ=2024年12月13日、山形県尾花沢市、高橋昌宏撮影 過剰な混雑や交通トラブルによって温泉街の評価が下がりかねないと、市は23日、日帰り客を対象にマイカー規制や来訪客数の制限に乗り出した。 ■映える風景目当てに、夕方から増える観光客 人口約1万3千人、スイカと花笠が特産で国内有数の豪雪地帯である市に、現在は年間30万人を超える観光客が押し寄せる。近年は特に、外国人旅行者の増加が目立つ。一般社団法人「東北観光推進機構」によると、今年1~4月の訪日旅行者の実訪問数は約4万8千人。昨年同期(1万8千人)の3倍近くに増え、東北・新潟域内の訪問スポットでは仙台駅前に次いで、2位になった。 冬場は多くの観光地が集客に苦労するが、銀山温泉は冬も人気が高い。ガス灯がともる温泉街に雪が降る幻想的な風景を目当てに、夕方に多くの日帰り客が訪れ、狭い温泉街の通路が混雑する。 一方で深刻なのが交通トラブルだ。温泉街に続く道は坂道で、そこに降雪がある。市や温泉組合によると、路上駐車などによって渋滞が発生。これにより救急車が温泉街にたどりつけず、救急隊員が下りて駆けつけたこともあったという。 このため、市はトラブルの多い冬季に日帰り客の「総量調整」を行う実証実験に踏み切った。対象は乗用車(レンタカー含む)、貸し切りバス、県外のタクシーで訪れる日帰り客だ。駐車場で有料シャトルバスに乗り換える「パーク・アンド・ライド」を始めた。激しい混雑が予想される午後4時以降のバスは予約制とし、来訪者数を制限する。市の実験は来年1月6日まで。シャトルバスの予約は特設サイト(https://ginzan-artmuseum.com/)から申し込む。運賃は中学生以上500円。1月7日~2月28日は温泉組合が主体となって行う。
朝日新聞社