子どもがゲームをする時間がどんどん長くなっている
<長時間のゲームで朝起きられなくなり、結果として朝食を食べない欠食率の上昇が起きている>
フィンランドの学校で「脱デジタル化」の取組が進んでいるという。画面と長時間向き合うことによる健康への悪影響、授業中にSNSを見てしまうなどの集中力の低下、といった問題が出てきているためだ。オーストラリアでは、ネットいじめや犯罪被害を防ぐため、子どものSNS利用を禁止する方針も示されている。 【グラフ】この10年で小学生のゲーム時間は増加傾向にある ICT先進国の動きだが、日本の学校でも「1人1台端末」のGIGAスクール構想が実現し、全ての子どもにデジタル機器が行き渡るようになっている。スマホの所持率も上がり、最近では小学生でも高学年になると、8割の子どもが専用のスマホを有している。 当然、上記のような問題が生じてくる可能性はある。画面と向き合う時間(スクリーンタイム)が長すぎると、視力の低下につながる。子どもの場合、深夜までゲームに興じて寝不足にもなりがちだ。 こういう子が増えているであろうことは、データでも分かる。<図1>は、小学校6年生の児童に「ゲーム(コンピューターゲーム、携帯式のゲーム、携帯電話やスマートフォンを使ったゲームも含む)を、平日1日当たりどれくらいするか?」と尋ねた結果だ。 <図1> 10年前の2014年では「1時間未満」が32%と最も多かったが、今年では「1時間台」が最も多い(25%)。分布は右側にシフトし、現在では全体の31%が1日3時間以上、18%が4時間以上ゲームをしている。 この10年間でゲームの時間が長くなっているのは,専用のデバイスを所持する子どもが多くなっているためだろう。学校から帰った後、寝るまでの間に4時間以上もゲームをするというのは相当なものだ。深夜まで布団にくるまってスマホでゲームをしている姿が目に浮かぶ。それで朝起きられず、朝食も食べないで学校に行く。こういう子も増えているかと思う。 上記のデータには地域差があって、小6児童のうち1日4時間以上ゲームをする子の割合が最も高いのは大阪府で23.0%、最も低いのは長野県で18.0%(2024年度)。朝食をあまり(全く)食べない子の割合は大阪府が7.7%、長野県が4.2%。2つの指標のマトリクスに、47都道府県のドットを配置すると<図2>のようになる。 <図2> 長時間のゲーム実施率が高い県ほど、朝食欠食率が高い傾向にある(相関係数は+0.7059)。地域単位のデータではあるものの、「長時間のゲーム→朝起きられない→朝食欠食」というのは、普通に考えても頷けることだ。利用を通り越して「依存」に陥ると健康に悪影響が及ぶ。 ICT機器は子どもの勉学に資するが、それに頼り過ぎたり用途を間違えたりすると、よからぬことが起きる。最近ではデジタル教科書も広まっているが、「文字を手書きすることや実験等の体験学習が疎かになることは避けること」という留意事項が示されている(文科省)。また「寝つきが悪くなるため、就寝1時間前からはICT機器の利用を控えること」とも言われている。 自我が未熟な子どもの場合、大人が指導を行い、適切な利用(用途)に仕向けていくことも必要になる。 <資料:文科省『全国学力・学習状況調査』>
舞田敏彦(教育社会学者)