認知症になると、預金の引き出しや不動産の売買などができなくなると聞きました。こういうとき、どのような制度を利用すればいいのでしょうか?
認知症は多くの高齢者が発症する危険があり、そのための財産管理をどうするかが、これまでも問われてきました。 ▼子ども名義の口座に「月3万円」ずつ入金してるけど、将来口座を渡すときに「贈与税」はかかるの? 非課税にすることは可能? 以前は、認知症を発症したと診断されると本人の銀行口座が凍結され、預金を引き出そうとする家族との間でトラブルも発生していました。金融機関の対応も柔軟になりトラブルは減りましたが、高齢者の財産管理と円滑な移転をどう進めるかは、課題となっています。
銀行などの「代理人制度」を利用
銀行などの金融機関の対応策として、「代理人制度」を採用しているところがあります。 これは認知症などで預金などが凍結されるのを防ぐため、判断能力がある段階で「代理人」を定め、金融機関に登録しておけば、登録された代理人が本人に代わって、預金の引き出し、扱っている投資信託の売却などができる仕組みです。 本人名義の定期預金も引き出すことが可能です。金融機関の側でも認知症を発症した預金者の口座凍結に関しては、その家族とのトラブルが多発していたため、この制度によるメリットが認められます。 この制度は、メガバンクなどの金融機関で採用しており(ゆうちょ銀行は検討中)、預金などの引き出しを巡るトラブルはかなり減少したといえます。 70歳以上の方で、この代理人制度の登録を行っていない方は、信頼できる親族の方に代理人となってもらい、金融機関に登録手続きをされることをお勧めします。この登録には、信託契約などとは異なり、手数料も原則としてかかりません。 これまでも、キャッシュカードが手元にあり暗証番号を知っていれば、家族が引き出すことは可能でしたが、この登録をしておけば、違法性が問われることもなくなります。 ただし、誰を代理人とするかによるトラブルを避ける必要があります。子どもが複数いる場合、そのうちの1人だけを代理人として登録するため、金融機関はその代理人の要請があれば、預金の引き出しにも対応します。 ところが、子ども同士の仲が悪く、代理人が勝手に預金を引き出しているといったクレームが、代理人以外の親族から出てくる事態も想定されます。誰が代理人になるかを判断力が低下する前に決定し、他の親族にも周知しておくことが不可欠です。