「アベノミクス解散」の争点は成長戦略 岡山大学准教授・釣雅雄
景気には良い時もあれば、悪い時もあります。昨年は良い時で、今年は悪い時でしょうか。ただ、その景気の動きをアベノミクスの争点とすべきではありません。 一方で、アベノミクスのうち成長戦略は争点となり得ます。11月19日の日本経済新聞朝刊で安倍首相が「成長戦略を前に進めるべきか国民の皆さんの判断を仰ぐ」と述べたことが記事になっていました。私はこれがまさに経済面での選挙の争点だと考えます。 景気とは何かがわかれば、アベノミクスの争点ははっきりしてきます。
(1)景気とは?
景気は2つの視点からみることができます。1つめは、予期しない経済ショックです。石油ショック、円高不況、リーマンショック、あるいは自然災害など経済は様々な経済ショックに見舞われることがあります。このような状況に対しては、経済政策による応急処置が必要なのは言うまでもないでしょう。 問題はもう1つの景気循環です。皆さんの家計を例に考えてみますが、月給という形で固定的な額の収入を得ている人が多いと思います。そのため、ある月に旅行したり、たくさん外食したりすれば、その前に貯めておくか、その後に節約するかが必要となります。このように、月給という一定の額を基準として、支出が上回ったり、下回ったりしながら私たちは生活しています。 それが経済全体で生じているのが景気の波です。企業でも同様なことが生じます。景気が良くなると、企業はたくさんモノを作るでしょう。ただ、ぴったりと需要に合せて生産するのは難しいので、楽観的な見通しを持ってしまうと、作りすぎてしまいます。一方で、人々は景気が良くてお金を使いすぎると、しばらくすると節約し始めます。そうすると、モノが余るので調整が必要となり、生産活動や投資も減少することになります。
そもそも3ヶ月毎に発表されるGDPはこのような波のうち、季節性のものを調整しています。図は、GDPの原数値(元の値)と季節調整値を単位をそろえた上で、重ねて示しています。これほど日本経済には波があり、発表されている数値がずいぶんと調整されていることを皆さんは知っていたでしょうか? こう考えると、今回の景気の波は消費税の駆け込みと反動が主ですので、2つめの通常の景気循環から生じていることが分かります。