始まった生成AI時代本番、人間の創造性はどこで発揮されるのか?
今回は初めに、上の「作品」を見ていただければと思います。 抽象画? いえいえ、北岡明佳「真珠の首飾りの少女の波形」(2024)、抽象画ではなく、アート&サイエンス最前線で原理から創り出した、とても具象的な作品です。 【写真】「錯視」の例。遠くから作品を見ると世界的名画が姿を現す。 この作品は少し遠くから見たり、あるいは縮尺を小さくすると、その実体が見えてきます。 あらあら、遠くから作品を見ると、ヨハネス・フェルメールの「真珠の首飾りの少女」が、黒い格子縞の間から姿を現しました。 どうでしょう。不思議だと思いませんか? この作品、ならびに錯視の現象は、立命館大学教授でもある北岡明佳さんが原理から組み立て、創成された世界原著、オリジナルの仕事です。 この作品をはじめ、AI時代に人間の創造性を問う展覧会 『越境する心と芸術・・・「脳とAIは障碍を超えて」』とシンポジウムを5月17~27日にかけて東京都美術館で行います。 昨今の見識の新聞やテレビは、告知してもちっとも出してくれませんので、本展に関連して、AIと脳研究、そして新たな表現の創成に日本のパイオニアがいかに偉大な貢献をしてきたか、また、これから次代を担う若い人たちが、オリジナルな仕事が展開できる、広々としたフロンティアがあることを、テーマを分けてご紹介したいと思います。 なお、展覧会もシンポジウムも完全非営利、こちらから申し込んでいただければ入場できますので、ぜひお運びください。 さて、先ほどの作品、何が不思議だといって、同じ絵柄でありながら縮尺が違うことで全く違う像が認識されるでしょう? こういうことが、画像認識AIでは全くできない。
■ AIが得意で人間が苦手:愚直で莫大な作業 突然話が変わるようですが、東京都内と栃木県那須町を往復して発生した「2遺体事件」連休明けから大きく動いている様子です。 こうした事件の捜査では「監視カメラ」画像や「自動車ナンバープレート」の追跡、携帯電話などのアクセス記録解析が活用され、様々なAI技術が事件の解決に貢献しています。 かつての警察の捜査力であれば、状況証拠だけで不十分とされたかもしれない事件が、きちんと証拠づけられ、解決されていく。 例えば、ある空き家に数人の人が入り、その中の何人かが暴行され、残りの人間が無傷その他で出てくれば、犯人はその中に必ずいることになるでしょう。 2000年頃には「機械システムには不可能」と言われていた、レントゲン写真などの「読影」による診断も、2010年代にAI化が長足の進歩を遂げ、微小な初期癌も見逃さない精度を誇るようになりました。 また、莫大な数の車が走行するなか、犯行現場でカメラに写っていたナンバープレートの情報から、同一車両がどのように(例えば都内と那須を)往復したかといった経路を割り出すのは、人間の手作業では困難(というか不可能)ですが、AIは愚直にそれをこなしてくれます。 AIにもAIの長所がたくさんある。 では、人間に勝ち目が全然ないのかといえば、全く逆で、人間に可能なほぼすべてのことが、現状のAIには、まだ十分にこなせない。 同じデータを提供されても、人間のように複数の解釈を並行するような芸当が、現状の機械システムには、まだ、ほぼ全くできません。 ところが、そうした現象の大半は極めて「自然」に見えるので、私たちユーザーの人間自身が、何が問題なのか、まだよく分かっていないというのが現状になります。