レアル・マドリードが通算15回目の優勝。福西崇史が解説するCL決勝の勝敗を分けたポイントとは?
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。 そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる! 第98回のテーマはUEFAチャンピオンズリーグ2023-24決勝について。ドルトムントを2-0で破り、レアル・マドリードが通算15回目の優勝をかざったCLファイナルで、勝負を分けたポイントを福西崇史が解説する。 * * * 現地6月1日(土)にUEFAチャンピオンズリーグ2023-24決勝、ドルトムント対レアル・マドリードが行われ、2-0でレアル・マドリードが通算15度目のCL制覇を成し遂げました。決勝トーナメントの勝ち上がり方もそうでしたが、決勝でもレアル・マドリードの勝負強さが際立った試合だったと思います。 前半はレアル・マドリードが非常に苦戦しました。ドルトムントが守備時にシステムを4-1-4-1のような形になり、中を締めたことでマドリードは陣形の外側でボールを回すことになりました。 うまく制限をかけたドルトムントは、奪ったボールを素早く縦に動かし、前線のFWカリム・アディエミやFWジェイドン・サンチョのスピードを生かしながら鋭いカウンターを仕掛けてチャンスを作っていきました。 逆にドルトムントがボールを保持したときに、マドリードは2トップでボール保持者に制限をかけることができず、あるいは流動的な攻撃の立ち位置から守備に切り替わる際の隙を突かれ、DFニコ・シュロッターベックやDFマッツ・フンメルスからライン間へ縦パスを通され、簡単に中盤ラインの突破を許していました。 それによってマドリードは後手に回って後ろ向きの守備を強いられたり、ライン間でボールを受けたユリアン・ブラントなどが、アディエミやサンチョが追い越していく時間をうまく作り、守備ラインの裏へスルーパスを通すなど、狙い通りに崩すシーンがいくつもあったと思います。 しかし、組織的な守備、ビルドアップでドルトムントが優勢にゲームを進めながらGKティポ・クルトワのビッグセーブに阻まれながら決定機を決められず、前半をスコアレスで折り返してしまったのは、結果的に勝敗を分けたひとつのポイントでした。 後半になると、マドリードは守備時に4-4-2から4-5-1に立ち位置を変えて、前半に散々通されていた縦パスをシャットアウトしました。けれど、1トップでは前からのプレスが効かないので全体的に下がらざるを得なくなり、ドルトムントがペースを握っていたと思います。 マドリードは相手の力をリスペクトして、こうした割り切ったポジションチェンジをスムーズに行えるところが、マンチェスター・シティやバイエルン・ミュンヘンも打ち破ってきた要因の一つです。このレベルでどんな戦い方にも対応できるのはチームとしての能力の高さを物語っていると思います。 攻撃では、前半から脅威だったヴィニシウス・ジュニオールの単独の突破力を軸にしつつ、フンメルスやシュロッターベックがギリギリでカバーして、膠着(こうちゃく)した状態が続いていました。