最高位小結の阿武咲が引退会見 小学校からのライバル元貴景勝の湊川親方に話題が及ぶと号泣
最高位小結の阿武咲(28=阿武松)が、笑顔と涙で大相撲に別れを告げた。19日、東京・両国国技館で引退会見。日本相撲協会に残らず、来年4月に馬油(ばーゆ)を使ったせっけんや化粧品など、美容商品を扱う会社に入社すると明かした。同6月1日には両国国技館で断髪式を実施予定。まげを残したままの新入社員生活を、心待ちにしている様子だった。一方で元大関貴景勝の湊川親方に話題が及ぶと号泣。小学校からのライバルに感謝した。 【写真】涙があふれた阿武咲 みるみるうちに顔が紅潮し、涙があふれ出た。阿武咲は小学校のころからのライバル、元貴景勝の湊川親方に引退の報告をしたか問われると「はい」と即答。続けて「今まではお互い現役中で、素直な気持ちを言えなかったけど『本当にありがとう』と。同じ時代に生きられてよかった」と話し、大粒の涙を何度もぬぐった。湊川親方からは「オレら頑張ったよな」と、電話口で返されたといい「うれしかった」と、1場所早い秋場所で引退した、盟友のねぎらいに感謝した。 青森の打越(うてつ=阿武咲の本名)と、兵庫の佐藤(湊川親方の本名)といえば、小学生のころから全国に名前が通っていた。ともに96年度生まれの同級生が、幕内優勝を懸けて23年初場所13日目に対戦したのが、現役生活で最も思い出深い一番。「昔から知っている間柄で、最高峰の舞台で優勝争い。一緒に頑張ってきた仲だったので特別。もちろん負けたくなかったけど、うれしかった。死ぬまでの財産。本当に幸せな相撲人生だった」。敗れたが「全てを出し尽くした」という最高の取組だった。 「(湊川親方とは)同じような体格だし、ここが限界だったのかもしれない」と、ともに慢性化したケガの影響で、同じ年に土俵を下りる決断をした。阿武咲は古傷の右足首や右膝の痛みに加え、夏場所で両肩を痛め、持ち前の突き、押しはもちろん、おっつけも力が入らなくなった。「阿武咲の相撲ではない。相撲を取れる体ではなくなった」と引退に迷いはなかった。 今後は将来的な独立も視野に、馬油を使った美容商品を扱う会社に入社する。「自分自身、肌が弱くて馬油に助けられたので、同じように困っている人の力になれば。家族がいるから頑張らないと。新しい生活が楽しみ」。第2の人生も、夫人と3人の子どもを引っ張っていく決意。最後は晴れやかな笑顔で相撲界に別れを告げた。【高田文太】