「帰れば死ぬ!」強制送還の瀬戸際でアフリカ系男性は叫んだ 認定の厚い壁、改正入管難民法に募らせる不安
関連動画はこちら https://youtu.be/oYKS3buwHVk ▽繰り返された「抜き打ち」送還 どうして当時、男性は急きょ「抜き打ち」のような帰国を迫られたのか。もし難民不認定に対する異議申し立ての棄却が前もって告知されていれば、不認定処分の取り消しを求める訴訟の提起や、再び難民申請する機会があった。 ところが、入管庁の難民審査部門は、男性が裁判を受けられないようにするために棄却決定の通知をあえて遅らせ、入管施設の送還部門とあらかじめ日程を調整。棄却後、直ちに送還を執行しようとしたことが訴訟の過程で明らかになっている。 一審の東京地裁判決(2022年12月)は、男性への告知を遅らせたことは違法と判断したものの、その他の違法性を認めなかった。一方、高裁判決は、司法機会を奪う目的で両部門が調整した送還自体を「裁判を受ける権利を侵害するもの」と断じ、入国警備官による一連の制圧行為も違法と判断した。国は上告せず判決は確定した。
現行の入管難民法は、難民申請中の強制送還はできないとされている(送還停止効)。難民条約が禁じる、迫害の恐れのある地域に送還しない原則(ノン・ルフールマン原則)に則ったものだ。ところが、男性のように、難民申請の棄却を告知した直後に入管が強制送還に踏み切るケースは過去に繰り返されている。 21年1月には、難民申請の棄却告知の翌日に強制送還された南アジア出身の男性が原告の訴訟で、名古屋高裁が「男性が司法審査を受ける機会を実質的に奪った」と指摘、損害賠償を認めた。ただ、憲法違反は認めなかった。 出入国在留管理庁はこの判決を受け、同年6月に「送還は告知から原則2カ月後とする」との通達を出したが、その後の9月には、難民不認定の異議申し立ての棄却告知の翌日に強制送還されたスリランカ出身の2人の男性に対し、東京高裁は「憲法が保障する裁判を受ける権利を侵害した」と判断した。 ▽改正法が男性に引き起こした問題とは