iPS細胞から作製した角膜シートの安全・有効性を確認、阪大チーム…年度内に治験開始へ
大阪大のチームは、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した角膜細胞のシートを重い目の病気の患者4人に移植した臨床研究について、全員の安全性が確認され、視力が回復したとする成果をまとめた。論文が国際医学誌「ランセット」に掲載された。今年度にも阪大発の新興企業「レイメイ」(大阪市)が治験を開始し、実用化を目指す。
対象は「角膜上皮幹細胞疲弊症」の患者。感染症や外傷、薬の副作用などで角膜上皮が傷つき、視力が低下する病気で、進行すると失明することもある。
チームの西田幸二・阪大教授(眼科学)らは、iPS細胞を角膜の透明な細胞に変化させ、円形のシート(直径約3・5センチ、厚さ約0・03ミリ)に加工。2019~22年、重症の30~70歳代の男女4人に移植して経過を観察した。4人はいずれも、移植に伴う明らかな拒絶反応や腫瘍化などの異常はみられず、1年後には最も良好な人で矯正視力が0・15から0・7へ改善するなど、全員の有効性も認められた。
治験は患者数を増やすなど、規模を拡大して実施する計画で、レイメイの科学技術顧問も務める西田教授は「再生医療の実用化を加速させていきたい」としている。
藤田医科大の 榛村(しんむら) 重人教授 (再生医学) の話 「十分な治療効果がみられたことは意義があり、患者にとってメリットは大きい。この病気の原因は様々で、すべての患者に適用できるかどうかは検討が必要だ」