今年も「つまらない」「学芸会」…『THE W』が”視聴者感情を逆なで”し、厳しい声が飛び交ったワケ
大会全体から漂うバランスの悪さ
『THE W』という賞レースにとって難しいのは、ネタのレベルや審査基準への批判が、大会そのものに及んでしまうこと。今回も放送中からいくつかの点でバランスの悪さが指摘されていた。 まず「女性限定」という個人尊重の時代に合わない制限をかけていること。男女差別の指摘に加えて、「LGBTQの人は出られないのか」などの批判は、例年問題視される『NHK紅白歌合戦』以上かもしれない。 また、今回は女性限定という大会形式が「最終決戦で全3組が下ネタを連発した」という偏りに繋がった感があった。逆に男性芸人は批判を避けるため、ゴールデンタイムでの下ネタはほぼ選ばなくなっているだけに、女性限定というバランスの悪さが招いた事態に見える。 バランスの悪さを指摘されがちなのは、漫才、コント、漫談、モノマネなどが混在した大会形式も同様。今回も最初の対戦から1人vs4人のコント対決だったが、何でもありの大会形式が「面白い」「楽しい」というより「見づらい」「雑」などの批判を招いている。 さらにバランスの悪さは女王への待遇にも表れ、批判の的となっていた。にぼしいわしは1000万円もの賞金に加えて、日テレ系のバラエティ、情報番組、ドラマへの出演権、東京ドームジャイアンツ戦の始球式などを獲得。これに「実力やネタのレベルに釣り合わない」という不満の声があがっていた。 ちなみにエントリー数は『M-1グランプリ2024』は1万330組、『キングオブコント』は3139組、『R-1グランプリ2024』は5457組。903組の『THE W』とはケタが違うだけに、レベル以前に「ここまで豪華な特典を与える必要はない」とみなされても仕方がないだろう。当然ながら、にぼしいわしに罪はなく、過剰に女王として持ち上げる制作サイドの問題にほかならない。
繰り返される「続きはHuluで」
そしてもう1つ見逃せなかったのが、女王決定後のシーン。 にぼしいわしが優勝コメントを語っていたとき、突然カメラが切り替わり、感動のムードが断ち切られてしまった。代わって映されたのは、日テレ・並木雲楓アナウンサーとサポーターのコットン、相席スタート・山添寛。並木アナは「このあと8代目女王とファイナリストのいる『THE W』“最速”反省パーティーHuluで生配信します。激闘を終えたみなさんと女王の裏側トーク、ぜひお楽しみください」と告知した。 生放送だけにコメントが途切れて放送終了するならまだしも、次に映されたのは自局の宣伝。しかも有料配信サービスの宣伝であることに批判が集まっていた。この「続きはHuluで」はドラマでさんざん叩かれてきた営業戦略。番組放送中の『応援ブース生配信』はTVerで行っていただけに「なぜ続きをTVerでやらないのか」「日テレ、こういうところだぞ!」などの厳しい声があがるのも当然かもしれない。 人気コンテンツになってから稼ぐのがビジネスのセオリーだが、『THE W』は発展途上のコンテンツ。一方、独走状態の『M-1グランプリ』は大会序盤から終了後までほぼ無料配信しているだけに、その差を嘆く声があがってしまうのだろう。
木村 隆志(コラムニスト/コンサルタント)