舞台『そのいのち』で主演を務める宮沢りえ「健常者と障がい者ってなんなのか。その言葉自体に疑問がわいている」
佐藤二朗が12年ぶりに新作戯曲を書き下ろし
宮沢りえが主演を務める舞台『そのいのち』の制作発表会見が8月29日、都内で開催された。 本作はドラマ、映画、バラエティーとさまざまなシーンで活躍する個性派俳優の佐藤二朗が12年ぶりに書き下ろした作品。ミュージシャンの中村佳穂の楽曲「そのいのち」にインスパイアされたもの。 物語は介護ヘルパーとして働く山田里見と里見の雇い主である障がいを持った相馬花とその夫の和清の穏やかな日々と、あることをきっかけにその穏やかな関係が徐々に狂い始めていくさまを通じて、「持つ者」と「持たざる者」の間にある埋めようのない「溝」を描くという。 宮沢は主人公の山田里見を演じ、佐藤は相馬花の夫の和清を演じる。 佐藤は「針がなぜ腰痛とか肩こりに効くかというと、針で傷をつけるから。その傷を補おうとして血の巡りがよくなって、結果として肩こりとか腰痛が治る。この話が好きで、ちょっと大げさかもしれないが、それが“生きる”っていうことなんじゃないかという思いがあって、それで今回の本を書きました」とこの脚本を書くに至った思いを語った。
宮沢は「私は役者さんである佐藤二朗さんのお芝居がとっても好きで、映画も映画館に行って、本当にお芝居に感動することが多くて二朗さんのファンなんです。その二朗さんが12年ぶりに書かれたという台本が家に届いたときに、まず心がワクワクしたというか“二朗さんがどんな本を書いたんだろう”って思って読み始めて、最初は会話のテンポもよくユーモアもあったりしたんですが、途中、鳥肌が立つシーンがあり、その瞬間に“このお芝居をやりたい”と思いました。稽古もとても大変だと思うが、その大変なことを乗り越えたいと思うような戯曲でした」と出演を決めた理由を明かした。 また佐藤は戯曲を読んだ宮沢からの「そそられます」という言葉を聞いたときに「この俳優は信用できるなと思いました」とも語った。 相馬花役は佳山明と上甲にかのWキャスト。佳山は脳性まひの後遺症がありながら、上甲は筋ジストロフィーという難病と闘いながら女優として活躍。ともに車いすのハンディキャッパーなのだが、この2人を起用した理由について佐藤は「最初は先天的な脳性まひがある車いすの若い女性の花の役を健常者の女優さんにお願いしようと思っていました。映像でも大変だけど舞台は、いわゆる障がいのある方に出ていただくのはさらにハードルが高いのは承知の上。さっき針の話をしましたが、僕にとって“負”を力に変えることが生きることというか。自分自身ではどうしようもない負が目の前にあったときに、それを生きる燃料にするというか、命を燃やす燃料にする、ということを祈るような気持ちで信じている。障がいのある2人をキャスティングして、その負が力になるところをこの目で見たかった」とその意図を語った。