厳戒態勢で発表された新型フェラーリ「12チリンドリ」の車名が「12気筒」を意味する
さらにマンツォーニ氏は、「フライングブリッジ」について語る。 「フライングブリッジと名付けた、ルーフまで回り込むようなリアクオーターパネルは、ダイナミックな造型にしました。(812スーパーファストより)サイズがコンパクトなので、それをおぎなうのも、デザイナーの仕事だと考えたのです」 マンツォーニ氏は、クーペのデルタ翼型リアウインドウの意匠をとても気に入っているようだ。では、これから出るモデルにもこのデザインテーマが反映されるのだろうか。
「いえ。私たちはデジャビュ(既視感)が好きではないのです。一度試したら、次はもうやらない。それがフェラーリのデザインです。フライングブリッジという意匠は、以前のモデルにもありますが、解釈がまったく違います」 ■「12気筒」と名付けた真意 では12気筒のエンジンはどうだろう。「これが最後の12気筒モデルになるのでは」というメディアもあり、実際に会場では「このモデルがスワンソングか」なる質問も飛びだした。スワンソングとは「最後の作品」という意味で使われる英語の表現だ。
「フェラーリでは、将来のモデルについて語らないことになっています」。マーケティング担当重役のエンリコ・ガリエラ氏は、そう答えた。 「でも、私たちが投資家向けのキャピタルマーケットデイで説明したのは、私たちはこの先も、内燃機関、ターボ技術、ハイブリッド技術、電気、あらゆる技術に投資を続けていくということでした。世界を見ると、状況や規制にフレキシブルに対応していくのが重要ですから」 車名をずばり12気筒(チリンドリ)にしたことに対して、「ここで打ち止め、という記念的な意味が込められているのだと思ったが」という質問もあったが、ガリエラ氏は「むしろ逆」だという。
「今の12気筒エンジンは、ユーロ6eの規制をクリアしています。そのため、2026年までは今のままで作り続けることができます。その先について、この場で言うことはできませんが、さまざまな規制から12気筒エンジンの継続生産をあきらめるメーカーが多い中、私たちはそれを作りつづける技術を持っています」 ■フェラーリの伝統はこれからも守られる フェラーリは、1947年に送り出した「125S」なるモデル以来、連綿と12気筒エンジンを作ってきた。もちろん、今は量産モデルに6気筒もあればプラグインハイブリッドもあり……と、パワートレインの多様化が進んでいるのは事実だ。