厳戒態勢で発表された新型フェラーリ「12チリンドリ」の車名が「12気筒」を意味する
■後輪左右が別々に「バーチャル・ショートホイールベース」 スペック上の特徴は、ホイールベースを812スーパーファストより20mm短くしたこと。目的は「回頭性を向上させコーナリングスピードを上げるため」だと、発表会場でエンジニアリングのトップであるジャンマリア・フルゼンツィ氏は説明した。 さらに、12チリンドリには、左右の後輪が別々の角度で動く後輪操舵システムも搭載。「バーチャル・ショートホイールベース」を採用した812スーパーファストの場合は同じ角度で操舵されるので、これは同様のシステムを採用した812コンペティツィオーネゆずりといえる。
「たとえば、コーナリング時は外側のタイヤを積極的に操舵します。すると、ホイールベースが(812スーパーファストより)50mm短くなったのと、同じ効果が得られるのです。一方、高速走行時は、ロングホイールベースと同様の安定性が得られます」 フルゼンツィ氏による説明だ。もうひとつユニークなのは、リアスポイラーのデザインである。 「機能とフォルムの折り合いをつけるのが、開発チームのもっとも大事な仕事です」とフルゼンツィ氏は前置きしたうえで、12チリンドリの電動リアスポイラーは、左右に分かれたセパレート型であることを紹介する。
「一体型のスポイラーにすると、リアウインドウの意匠を損なってしまううえ、荷室へのアクセスが制限されてしまいます。そこで左右に振り分けました。動きは同時です」 ここで出てきた「リアウインドウの意匠」とは、「デルタ翼」とマンツォーニ氏が表現するもの。デルタ翼とは、「コンコルド」や「サーブ37ビゲン」など、1960年代後半から1970年代にかけての航空機の翼形状のことだ。 「クーペのコクピットに超音速機のイメージを与えようと考えて、デルタ翼を参考に造型しました。同時に、ガラスでこのリアウインドウの形状を作ることで、ドラマチックな印象を作りたかったのです」