テラ・ローザが示したHR/HMの“様式美”をデビュー作『The Endless Basis』から探る
OKMusicで好評連載中の『これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!』のアーカイブス。レア音源&映像を含んだテラ・ローザの11タイトル(12枚組)を収めたの豪華ボックスセット『Terra Rosa 30th Anniversary Premium BOX』が発売されたとあって、当コラムも今週はTerra Rosaのデビュー作品をピックアップ。日本のヘヴィメタル、ハードロック史を語る上での重要バンドのひとつであり、そのサウンドは以後の邦楽ロック、J-POPにも少なからず影響を与えた存在とも言える。そんな彼らのスタイルとは──。 ※本稿は2019年に掲載
今も“様式美”を冠されるバンド
本稿作成のためにネットを漁っていたら、テラ・ローザには“様式美”という言葉が必ずといっていいほど付いていることが分かった。ほぼバンド名と対になっていて、完全に代名詞となっていると言っていい。今回リリースされたばかりの『Terra Rosa 30th Anniversary Premium BOX』のキャッチコピー、所謂“煽りの文章”にもこうある。 [日本を代表する「様式美HRバンド」の奇跡を辿る! レア盤を含む豪華12枚組‘テラ・ローザ’コンプリートボックスがリリース!] さらにその中身、各アルバムの説明文にも、この“様式美”が使われている。以下、抜粋してみる。 [伝説の様式美ヘヴィ・メタル・バンド“テラ・ローザ”の歴史はここから始まった!!(後略)](【DISC1】The Endless Basis)。 [徹頭徹尾“様式美”に拘った正統派王道サウンドは時代を超越する!!(後略)](【DISC3】Honesty)。 [(前略)従来の様式美スタイルにキャッチーな要素も取り入れ、洗練されたアプローチも目立つ3rdアルバム!!(後略)](【Disc4】SASE)。 (※以上、[]は全て(キングレコード Hard Rock / Heavy Metal公式サイト『王様ロック』より引用)。 こうなると“Terra Rosa=様式美”で確定、間違いなしである。それでは、その様式美とは何だろうか。こちらも何も考えずに“あれが様式美だ、これが様式美だ”と使っていたわけで、いい機会だとばかりにちゃんと調べてみた。そうしたら、『デジタル大辞泉』によれば“芸術作品などの表現形式がもつ美しさ”とある。一瞬分かった気にさせられるが、冷静に読むと辞書だけにさすがに抽象的である。よって、もう少しググってみたら、なかなか興味深い“様式美”の説明を見つけた。阿川佐和子著『聞く力―心をひらく35のヒント』に、デーモン小暮閣下にインタビューした時のエピソードとして、閣下が以下のように語ったと綴られている。以下、その箇所のみ引用させていただく。 [じゃ、速くて激しければ全部ハードロックなのかというと、そうではなくて。そこからまた枝葉が分かれていって。速くて激しいけれど、ドラマティックであったり、仰々しい決めごとを取り入れる。たとえばクラシック音楽のワンフレーズを持ってきて、あるポイントに来たら全員がちゃんと、♪ダダダダーンみたいにベートーヴェンの『運命』のメロディをぴったり合わせる。そういうのを様式美というんですけどね]。 [簡単に言うと、様式美の要素を入れないと、ヘヴィメタルとは認定されないんです。ハードロックに様式美を持ち込むと、それがヘヴィメタルになるというわけ](『聞く力―心をひらく35のヒント』 (文春新書・阿川佐和子 著)より引用)。 さすが閣下と言うべきか、自身がミュージシャン、HR/HM系アーティストなだけあって、衒いのない解説であるように思う。それが的確なのかどうか、テラ・ローザの1stアルバム『The Endless Basis』を聴きながら、以下、その答え合わせに挑んでみよう。