【報知映画賞】塚原あゆ子監督「映像で形にするための努力は怠りたくない」女性4人目の監督賞「ラストマイル」
今年度の映画賞レースの幕開けとなる「第49回報知映画賞」の各賞が25日、発表された。監督賞は「ラストマイル」の塚原あゆ子監督が受賞。 【画像】「報知映画賞」受賞者一覧! * * * 塚原監督の取材は、演出を務めるTBS系日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」(日曜・後9時)の撮影現場で行われた。次々と話題作を手掛けるヒットメーカーは、ロケを終えると真剣なまなざしから一転、明るい笑顔で「うわあ、感動するなあ…。うれしいです」と歓喜。女性監督では西川美和氏(2009年)、三島有紀子氏(17年)、河瀬直美氏(20年)に続いて4人目の受賞者となった。 本作は、TBS系「アンナチュラル」「MIU404」など数々の人気ドラマを生み出してきた塚原監督、脚本家・野木亜紀子氏、新井順子プロデューサーの“三銃士”が集結。両ドラマと映画の世界観を共有し展開する「シェアード・ユニバース」を実現させた。 「映画の企画を通すのは簡単じゃなくて。いろんなドラマで生まれたキャラクターが名刺代わりとして力になってくれました。あとは彼、彼女ら(ドラマ出演陣)をいかに自然に登場させるか。本筋に関係ないサービスショットはやめる、そのさじ加減は大事にしました」 巨大物流倉庫などのスケール感、荷物を届けるために最後の1マイルを奔走する人たちの存在を繊細に描いた。物語の中心に物流を据えたのは、「コロナ禍で宅配サービスを利用して感じた疑問と興味」が発端。野木氏による多重構造な脚本を受け取り「難解だけど、NOからは入りたくない。映像で形にするための努力は怠りたくない」。その深い読解力と俳優陣への的確な演出でヒットに導いた。 興行収入は公開3か月で58億円を突破し「まさにチーム力の結晶」と誇らしげに語る。12月に監督作「グランメゾン・パリ」、来年2月には「ファーストキス 1ST KISS」の公開を控える。「二度三度見て楽しんでいただけるように創意工夫したい」。仕事人は映像に情熱を傾け続ける。(奥津 友希乃) ◆ラストマイル 流通業界最大イベント「ブラックフライデー」の前夜、大手ショッピングサイトの関東センターから配送された荷物が爆発。日本中を震かんさせる連続爆破事件に発展する。センター長のエレナ(満島ひかり)は、チームマネジャーの梨本(岡田将生)と事態の収拾にあたる。 ◆塚原 あゆ子(つかはら・あゆこ)千葉大文学部卒業後、TBSスパークル(当時は木下プロダクション)に入社。助監督などを経て、2005年「夢で逢いましょう」でドラマ監督デビュー。TBS系ドラマ「Nのために」「最愛」など多くの話題作を手掛ける。18年に「コーヒーが冷めないうちに」で映画監督デビュー。21年、芸術選奨・文部科学大臣新人賞を受賞。 ▼監督賞 選考経過 藤井道人監督にも票が入ったが、1回目投票で塚原監督が過半数を獲得。「スケールの大きさと細部のリアリティを見事に統合した腕力。鳥の視線と虫の触覚」(見城)、「スケールの大きさに圧倒された。脚本の野木亜紀子さん含め、日本映画で女性の力を評価できることもうれしい」(渡辺) ◆選考委員 荒木久文(映画評論家)、木村直子(読売新聞文化部映画担当)、見城徹(株式会社幻冬舎代表取締役社長)、藤田晋(株式会社サイバーエージェント代表取締役)、松本志のぶ(フリーアナウンサー)、YOU(タレント)、LiLiCo(映画コメンテーター)、渡辺祥子(映画評論家)の各氏(五十音順)と報知新聞映画担当。
報知新聞社