大阪市の橋下市長退任記者会見【全文3】
大阪市の橋下徹市長は18日、任期満了に伴い大阪市役所で退任会見を開いた。橋下市長は冒頭から「メディアへの注文したい」と話し、同市の文化予算に関する報道について言及し「検証能力がない」などと批判からスタート。また、これまでやってきたことに対しては「やるべきことはやった」「反発を食らうことはやり尽くした」などと述べた。
住民サービスの転換と大阪都構想を成長戦略につなげることは矛盾していないか
司会:ほかに質問に質問のある方。 朝日新聞:朝日新聞です。お疲れさまでした。先ほど、住民サービスの転換が首長の仕事だというふうにおっしゃってましたけども、一方で大阪都構想は統治機構改革をして、経済成長戦略につなげるんだっていう話をわりとおっしゃってたと思うんですけど、やや矛盾してるような気がするんですけどね。 橋下:いや、だからダブルですよ。だから、普通の自治体の長なんかだったら都構想みたいな話もやらないじゃないですか。あれは自治体の長を超えた、やっぱり政治家っていう面でやってた部分はあるんでね。ただ、それだったら検証のところで都構想の検証と、それから住民サービスの転換のところをやってもらったらいいわけで、都構想で経済成長に直結するわけじゃないですからね。成長戦略とかそういうところを実現するための都構想だから、都構想が出来上がってから検証してくれたらいいわけですよ。だから今の状況は都構想は出来上がってないわけですから、僕の思ったとおりにね、府として行政マネジメントをやって、成長戦略を今、実行できてない状況だから。だから都構想をやってみて、広域行政を一本化して、そこで成長戦略の実現っていうものがやっぱりうまくいかないっていうんだったら、そこは厳しく批判してくれたらいいと思うんですけどね。 朝日新聞:今のお話ですと、経済成長戦略はやや積み残しっていうような。 橋下:いや、成長戦略は全部あるんですよ。だからそれをあと実行する段階だと。だから実行しやすい行政の組織は何なのかといったら都構想なんでね。これ、どこかで、議会でも言いましたけども、メディアの論調でも、特にやっぱり実務をやってない学者っていうのは、特に今言った質問と同じで都構想やったから経済成長につながると、必要十分条件だと思ってるんだけど、違うんです。必要条件なんでね。都構想やったからって、これあれと一緒ですよ。給食は僕は必要だ、必要だといったら、給食を食べたらじゃあ成績が良くなるのかって平気で言ってきた人がいるわけですよ。良くなるわけないじゃないですか。給食食べて、飯ばっかり食っててもそんなの太るだけなんです。飯も食って勉強して、で、学力が上がるんですから。その代わり飯を食ってなかったら、やっぱりそれ、勉強したってなかなか学力上がんないんです。だからこれは必要条件。 で、飯だけ食えば学力上がるって、これ、必要十分条件になるわけだけど、ご飯食べるだけで学力なんか上がるわけないんだよね。そういうことを平気で、僕は給食の必要性を言ったら、橋下さん、そんなご飯ばっかり食べてるだけだったら学力なんか上がりません。当たり前じゃないですか。都構想も同じです。都構想ってやって、それだけで成長戦略、実現できるわけじゃないですよ。でも、この都構想っていうものが必要条件であるならば、これが欠けてる。これが欠けてたら、やっぱり成長戦略っていうものは実行しにくいですよっていうのが、都構想のロジックなんです。 朝日新聞:きのう、議会の終わりに最後ごあいさつありましたけれども、そのときに50人ぐらいおられまして、初めて傍聴したと、橋下さんにお話聞いたんですが、人気と批判といろいろあったというようなところで、ご自身がどういう政治家だったんですか。 橋下:もう1回。 朝日新聞:ご自身は政治家として、どういう政治家だったと。 橋下:誰がですか。だから自分で評価してどうするの。そんなかっこ悪いことをして。 朝日新聞:いまだにというか、批判と支持、本当に最終盤まであの状況で引退されると思うんですけど、人気はあるんですか。 橋下:ないです。そんなの。それはだから、やっぱり、それは人気とかじゃなくて、政策については支持する、支持しないっていうのは、必ず出てくるのは当たり前じゃないですか。さっき言ったように僕は住民サービスの転換をやったわけですから、その転換方法については賛成、反対っていうのが出てくるのが当たり前だし、昔のように高度成長時代のようにね、たんまりある税金を配分する、そういう政治家だったら恨まれることとか、反対されることないですよ。これからの時代の政治家はみんな賛成、反対っていうものをしょった政治家じゃないと国家運営なんか、行政運営なんかできませんよ。万人から好かれる政治なんかできないんですから。だから自分はこういうふうに住民サービスを転換しますよ。税金の使い方をこういうふうに転換しますよっていうことをやれば、賛成、反対の声も必ず出てきますよね。 朝日新聞:5月17日の住民投票のあとに、私のような政治家がいるのは社会状況として良くないというような話をおっしゃってました。それは状況としては変わってるんでしょうか、変わってないでしょうか。 橋下:変わってると思いますよ。変わってるっていうか、変わってない。今も僕みたいに、転換、転換ばっかりを、ずっと賛成、反対っていうと、そればっかりを問い続けるっていうのは良くないと思いますよ。だから、賛成、反対を問うっていうのはワン・ポイントでいいわけです。今までのこの大きな政治や行政の流れで、個別の政策について選挙で問うわけじゃないわけですから。 僕はいつも言ってるじゃないですか。ワン・イシューは駄目だっていう。いつも皆さん、ワン・イシューは駄目だ、ワン・イシューは駄目だっていうけど、じゃあ、ありとあらゆる政策について、みんな有権者はそれ1つ1つ見て判断してるわけじゃないわけですよ。しかも政党とか候補者によってはその政策はクロスオーバーしてしまうんですね。この政策は向こうの候補者がいいけどこっちの政策は違うなとか、そういうふうになってしまうから、やっぱり政治の選択っていうのは、政策の選択ではあるけれども、その大きな方向性の選択であって。で、僕はそれは転換点を迎えたなと、この8年前、転換していかなきゃいけないなっていうことで、僕はいろいろ転換やってきたわけです。 で、だいたいその方向性で一定支持を受けたんであれば、次はそれをさらに精度を上げてつぎ込んでいく、そういう作業をやらなきゃいけないんでね。転換、転換ばっかりやってるわけじゃあ、やっぱり住民の暮らしのほうにつながっていきませんから、僕はやっぱり方向性を転換したっていうところになりますかね。だってあのまま知事の、大阪府庁だって、減債基金の借り入れ、あれ、朝日新聞が僕が出馬表明する前日ぐらいに報道してくれたんだけど、あれ、朝日新聞のあの報道がなかったら減債基金の借り入れ、使っちゃいけないお金、借金返済のために積み立てていたお金、5,500億円、あれの使い込みっていうのは、あれ、総務省、適法だって言ったんですよ。だから、あれ、朝日が報じて、僕がわんわん言って、翌年度から減債基金の借り入れは返す当てもない場合には、これは不適切か、違法。これ、重大な転換ですよ。 だからあれやってなかったら大阪府なんてもう、5,500億円、穴を開けたまま、結局あれ、財政証明書を見たら、20年後か25年後ぐらいに、どかーんって返済金額が増えるような、もう借金の返済を先送りをやってたんですね。とんでもない。それを僕が知事になって、V字回復をしたわけじゃないけどもね。臨財債も含めてそれは借金増えたところはあるけれども、今まで使っちゃいけないお金、そういうところを使うことはばちっと断ち切って、その復元に変えようということをやり始めたんで。そして借金の返済まで、減債基金の積立ね、借金の返済のために積み立てていかなければいけないお金については、20年後、30年後にどかーんと返しゃあいいやって、そんな先送りはやめて、毎年毎年、均一に積み立てていきましょうってルールに変えていってるわけです。 そういう方向性を変えていったのが、僕の役割というのは、その方向性を変えるっていうところで、今までやってた府政。それから大阪市政だって特定団体とか、それから税金の使い方だって、子育て・教育のほうにお金を回してたところが少なかったわけですよ。で、そういうところの方向性を変えたっていうのが僕の役割で、そこから精緻に組み立ててもらうのが、今度、吉村さんの役割ですよね。 朝日新聞:最後なので、8年前の状況についてお伺いしたいんですが、知事就任なさる前に、子供が笑う大阪っていうのを、掲げてらっしゃったと思うんですが、それはどこまで実現されたっていうふうに。 橋下:それは子供が笑うって、うちの子供、笑ってないですよ。うちの子供、どんどん笑い顔がなくなってきました。そんなこと言ったって子供笑ってないじゃないか、あるじゃないですか。あとは全体見てもらって判断してください。大阪ではやっぱり私学、行けてなかったところを私学に通うことができましたっていう、多くの人の声をもらうことが多いし、塾代助成についてもそうだし、これは朝日、産経新聞、産経かな、じゃないな。もともとは区長からの話だったんですけど、残念ながら命を絶った高校生いましたけど、その子の声に応じて、知事ともタッグを組んでやったり、それは全員が全員笑うなんていうことは、それはできないけれども、今までやっぱり大阪府政、大阪市政は、おそらくこれは府議会、市議会の責任なんですけども、選挙というものを、これもう選挙の仕組みもしょうがないんですけど、ある意味高齢者のほうに過剰に税金を回していた。そういう状況を、言ったら政治家にとっては非常に票にならない、若い世代の人は選挙に行かないわけですから、この票にならない現役世代のほうにお金を回したっていうことで、実際に子供が笑っているかどうかは分かりませんけれども、そういうことをやって、そこを評価してくれる子育て世帯も非常に多いんじゃないかなっていうのは思ってますけどね。 朝日新聞:民営化の意見は道筋をつけたままで、そのままならなかったものもあると思うんですが、民営化の意見で積み残しっていうのはあるんでしょうか。 橋下:いや、積み残しって、僕の役割はそのこの将来、それも民営化の話とか、それは議会で記録されてるとか、議会の調整なんかっていうのは、朝日からもそういうな指摘ありましたけど、こんなのできるわけなくて、それまで民営化反対って言ってたんですよ、この役所は。それ、民営化反対だって言ってた役所の中で民営化のプランをまとめるっていうことが、どんだけ大変かと。これは言うのとやるのと全然違って1回、会社でやってみてくださいよ、それを。朝日新聞で、じゃあ、こういうことは反対って言ってたものを反対、それはそうだ。たいだい慰安婦発言だってあれ、取り消すのに何年かかってるんですか。たったあれぐらいの発言。あんなのもうすぐ取り消しゃあいいものを、あれをやるのに8年とか、え? 10年? 8年? 10年か。もっとだ。十何年でしょう。 たったそれ、あれを変えるだけで何十年かかってるんですか。この役所では民営化は反対だっていう、組合側のほうが言ってたわけですよ。それを、プランをまとめたところだけでもね。まあ、言ったら僕の役割はそこまでなのかなというふうに思ってましたけどね。それは議会が、そこから議会の議決を得ると、そんなの不可能を求められるのに等しいわけですよ。普通の人間じゃあそんなことできません。 朝日新聞:普通の人間だと。 橋下:え? 朝日新聞:普通の人間であると。 橋下:何がです。 朝日新聞:普通の人間だっていうふうにおっしゃって。 橋下:そうです。 朝日新聞:分かりました。 橋下:普通じゃないですか。