大阪市の橋下市長退任記者会見【全文3】
ある意味、火をつけていくってのが政治家の役割
司会:では最後に読売新聞。 読売新聞:読売新聞のキヨナガです。府知事時代も含めてなんですけども、政治家として国と地方の関係の見直しにだいぶこだわられていたと思うんですけども、8年間やってこられて、国に改善を求めた、求めて成功したのが国直轄事業負担金の見直し、あるいは国の所管団体の会費なんかの負担をしなかったりとか、いろいろされてたかと思うんですけど、できた部分とできなかった部分。 橋下:いや、僕がやってきたことなんか、もうしょうもないことですから。国から見たら鼻くそみたいなことでね。なんにもそんなのでなんかが変わるってわけじゃない。やっぱりこれは憲法改正で国の意思決定の在り方ってことを変えていかないと無理です。直轄事業負担金の廃止って言ったって、あれ、一部の建設負担金かなんかのほんの一部だけですよ。国の外郭団体の負担金を大阪府が払わないと言ったって、全国の自治体1,800はみんな払ってるんですよ。そんなのは国相手に何か自分がこれやりました、あれやりました、なんて言うことは、それはないですよね。 だから個別政策で言えば、それは読売新聞の検証に入ってないけど関空だって、別に僕の権限じゃないけれども、慰安婦発言と同じように、やっぱり政治家っていうのはある意味、火をつけていくってのが政治家の役割であって、僕は関空と伊丹の統合に、あそこに至ったのは、第一次的には、これは前原、当時の国土交通大臣の前原さんの、これはもう大功績だと思ってますからね。伊丹空港、公営空港を大阪に差し出してくれたわけです。でもあれを持っていこうと思ったときには、それは地元自治体の、大阪府知事が、しかも僕は豊中に住んでおきながら、伊丹廃止ってことをぶち上げながら、それはいろいろその中で廃止を掲げながら、1回取り下げなら、ちょっと修正しながらとかいろんなことをやっていったけれども、最後はでも伊丹空港と関西国際空港が経営統合して、コンセッションでオリックス・グループのほうが買ってくれて、もうあれで関西国際空港の問題、長年の懸案だった金利負担部分のあの話がなくなって、民間経営の空港としてこれから羽ばたいていくというのは。まあ、こういうことも検証の中には全然入ってないものね。だから、もういいですけどね、別に入れてもらわなくても。 だからそういうことは、そういうことを、言う人はいます。いろんなことをやってきたというのはありますけど、そんなのは、あれやった、これやったって言ったって、そんなの自分で自慢できるようなことはないですよね。 読売新聞:逆に言いますと、その間、2度の政権交代があったんですけども、既存政党による政権交代では、地方分権というのはなかなか進まないという。 橋下:進まないですよ。これは大阪都構想を見てもらっても分かるとおり、なんで市議会議員があんなに反対をするかって言ったら、大阪市議会議員っていうのは全国の地方議会の中でも最高ステータスなんです。東京都議会議員と大阪市議会議員なんです。その役所がどれだけの権限を持ってるかってことで、議員はやっぱりそこでもう、大学もありますね、地下鉄もありますね、病院もありますね、予算規模は一兆何千億円ですね。もういろんなことを役所がやると、そこに乗っかってやっぱり議員も、なんか自分の力に見えてしまうわけです。国会議員も同じですよ。 だから、この地方分権なんかやって、今、国が持ってる権限とかそういうものが地方に移ると、それはやっぱ国会議員としてはもう耐えられないんじゃないですか。本当だったら普通のサラリーマン経験のある、会社経験のある人であれば、いかに自分の仕事を減らすかっていうのを一生懸命考えるのに、政治家の世界っていうのは、自分が汗かかないから。普通は、皆さんもそうだけども、普通のサラリーマンっていうのは仕事を抱えれば自分がやらなきゃいけないから、なるべく仕事は少なくしようと思うんだけど、政治家の場合には自分が汗かかずに役人にやらすわけですから、権限と財源を持ってるっていう、そこにやっぱりプライドというか気持ちいいところがあるんじゃないですか。 だからこれは、地方分権というか国の行政の形を変えようと思ったら、そういうことを本気で思ってるメンバーが、これもつくづく思ったけど、憲法改正でやるしかないですよね。憲法っていうのは統治機構を定める骨格なんで、ここで地方分権型の憲法っていうものをつくって。だから今までの国会議員とか、地方分権のなんかいろいろ政策を口に出すんだけど、それをどう実行するかっていうところを考える政治家って本当、少なかったです。どう実行するのか。 だから大阪を2つ目のエンジンにするとか、二極化、東京と並ぶ二極化をする、二極化して2つのエンジンで日本を引っ張る。これは財界も大阪の政治家もみんな言うんだけど、そこはどうやって実行するかって、やっぱ法律に定めれば、まずは定めないといけないですね。十分条件じゃないけども必要条件だよねっていうところからやっぱり僕は考えるわけです。法治国家ですのでね。これね、日本の役所っていうのは法律に定められるとみんなそれで動くんです。自治体であれば条例とか。だからこれは本当に地方分権に移行っていうことを考えたら、憲法を地方分権型の憲法にしていくというところが僕は最大のポイントだと思うんですけどもね。 それをやっていく政治グループとして、自民党、民主党や既存の政党や、国会議員もひょっこり使った人たちだなって。地方議員サイドのほうから地方分権を目指す国政政党が、これはちょっとお手盛りになっちゃうんで、おおさか維新の会の話になってしまいますけど、だってそういう第3のグループが出てきていいんじゃないですか。 読売新聞:第3のグループがなかなか出てこない、首長側として、首長連合が大阪維新の会をつくって、その後、首長トップとした地域政党ができたりとか、政治グループをつくったりすることで一時的に広がりましたけど、ちょっと今、下火になっていると思うんですけども、この動きが広がらないところがあるんですかね。 橋下:普通はやれないです、そんなの。僕は大阪維新の会を初めてつくって最初の統一地方選挙のときは、これはもういろんなところで言ってますが、体が動かなくなったんです。タウンミーティングのときも最初のころは、2回目ぐらいから知事と役割分担をやりましたけども、最初の一発目は大阪市内も大阪市外も全部僕1人でやったんでね。そんなもん、体が動かなくなるような、そんな、タウンミーティングだ、演説だ、そんなものを繰り返しながら、それをずっとやり続けるなんでなかなかできないですよ。だから全部でそれをみんなでやってくれっていったって無理だから、じゃあどうやってこれを広げていくかっていうのはものすごい大変でしたけどもね。だからそれをしっかり今度は大阪維新の会でどう広げていくかってことを考えないといけないんじゃないでしょうかね。 読売新聞:市長と国政政党の代表を兼ねるという、極めて異例のスタンスだったと思うんですけども、これで得られた成果とかっていうのは。 橋下:むちゃくちゃありますよ、そんなのは。だから国政政党に足を掛けて意味がないとかなんとかって言いますけど、政治なんてのは最後はもう政治力っていうそれだけなんですから。じゃあなんで松井知事と、それは松井知事と菅官房長官の関係っていうのは別に、僕らが国政政党をつくるかどうかに関係なく、たぶん人間的にものすごい波長が合って、信頼関係っていうのがあるとは思うんだけれども、でもやっぱり、その関係を核にしたとしても、国政政党っていうものがあるのとないのとでは、それは政治をやるときには全然違うんですから。 それから言ったら住民投票も、僕はこれ、あまり、あとでしゃべろうと思っていることを今ここで言うともったいないからあれなんだけども、言ったら、目標を定めたら、僕のやり方っていうのは目標を定めたらそれに向かってありとあらゆる方策を立てるわけですよ。ただそれは、振り返って見てからコメンテーターとか評論家がその入り口を見て、ああ、なんか橋下はジグザグ行ってるなっていう、そういうことを言うのは簡単だけど、目標を定めてそこに進もうと思ったら、それは真っすぐになんか行けるわけないじゃないですか。その都度、その都度、いろんな事態が生じて、いろんな課題があって、右へ行くこともあれば左へ行くこともある。いろんなことがあったけど、僕の目標は大阪都構想だったんで、住民投票だったんで、そのためには何をしなければいけないのかってことで全部判断してきたつもりです。 それは、じゃああの住民投票、国政政党がなくてできるんですかって、絶対できません。まず法律の改正っていうところまで行かなかっただろうし、最後の住民投票、ああいう形で住民投票が成立したのは最終局面での衆議院総選挙ってものがあったからそうできたわけであって。それは国政政党がなかったら、今のこういう状況っていうところまでは来れなかったと思いますけどもね。 司会:それではこれで終了させていただきます。ありがとうございました。