<油価が下がっている背景>原油生産量の足並みが揃わないOPECプラス各国の事情
中東産油国の油価判断の基準
ここ数カ月間で油価が大きく低下している。9月7日現在の油価は68ドル/Bで2022年2月のロシアのウクライナ侵攻をきっかけに油価が115ドル/Bまで高騰し、当時、中間選挙を控えたバイデン大統領がサウジアラビアを訪問して原油の増産を要請したものの相手にされなかった状況と大きな様変わりだ。 その後、油価は徐々に下がって68ドル/Bまで下がり、昨年10月のハマスのイスラエル攻撃で再度、100ドル/B近くまで上昇したが、ガザの衝突が原油生産に大きな影響を及ぼさないでいる事から、原油をめぐる地政学的リスクの懸念は低下し、この記事が指摘するように、経済の不振による中国の原油需要の低下、非OPECプラス加盟国諸国の増産により再度油価が低下しているのが現状である。 なぜサウジアラビアが油価の高止まりを強く望み、UAE等が増産を重視するのかは、財政が赤字とならないレベルの油価(財政均衡油価と呼ばれる)が各産油国で大きく異なることに起因する。 国際通貨基金(IMF)の試算によれば23年5月時点でのサウジアラビアの財政均衡油価は80.9ドル/Bである一方でUAEは56.7ドル/Bの由であり、この事が両国の原油減産に対する姿勢の違いの原因となっている。因みに、同様に国家の歳入を原油に依存しているクウェートは65ドル/Bであり、サウジアラビアの財政均衡油価は極端に高い。
サウジアラビア、UAE、クウェートの3カ国は、いずれも、原油収入に国家の歳入を依存して国民にバラマキ福祉を行う、いわゆるRENTIER国家であるが、サウジアラビアは、21年の統計で約1000万B/Dの原油を生産しており、これはUAE(約366万B/D)及びクウェート(約274万B/D)の数倍である。他方、養うべき自国民の数はサウジアラビアが約2400万人で、UAEの約12万人、クウェートの約10万人に比較して極端に多いことが指摘出来る。 長年、サウジの国家予算は油価の低迷で財政赤字が続いており、油価を上げる事は、内政の安定のために至上の命題となっている。