愛犬が急に豹変したらどうする? 重度の「分離不安症の」可能性も【ワンニャンのSOS】
【ワンニャンのSOS】#85 ワンちゃんの中には、ちょっとした飼い主さんの仕草や行動でスイッチが入って急に攻撃的になったり、豹変したりするタイプがいます。そうなると飼い主さんでも噛みつかれたりして大変でしょう。分離不安症といって、軽度ならフェロモン製剤が効果的。その製剤はこの連載でも紹介しましたが、重症のケースについてお話しします。 【写真】1匹の野良犬のおかげでアルコール依存から立ち直り…アイルランド人男性が生涯を捧げる犬の救済活動 先日、当院の近くに転居されたのを機に連れて来られたのは、11歳のワンちゃん。かなり性格がきつく、サロンでは暴れて危険なためトリミングを断られ、以前は近所の動物病院で麻酔鎮静してトリミングしていたといいます。元の病院で「同じ方法でのトリミングが可能な動物病院を探してやってもらうといい」とのアドバイスで受診されたようです。 飛びはねるネコちゃんだと危険防止で麻酔をかけることはありますが、ワンちゃんではほとんど聞きません。それで用心しながらそのワンちゃんとコミュニケーションを取ろうと、おやつをあげると、私の手から何ともなく食べてくれました。餌付け完了でコミュニケーション良好です。 話を聞くと、何かの刷り込みで興奮するとのこと。それが、リードをつけたり、トリミングで体に触られたりする行為のようです。そうだとすれば、気になることがありました。あくまでも推測ながら、トリミング台から落下防止でリードで柱に固定された状態で、叱られたりしたことがトラウマになったのかもしれません。 結局、当院では最後まで穏やかで保定しても大丈夫でした。ふだんは全く問題ないのに、トリミングに麻酔が必要だとすれば、逆に重症の分離不安症と判断できます。フェロモン剤では治りません。軽症には不向きですが、精神安定剤に分類される強いクスリをきちんと治療計画を立てて使えば十分な改善が見込めます。 ■薬の離脱には2カ月ほど その薬は依存度が強いので、効果を確認したら少しずつ容量を減らして薬から離脱すること。そこまで完遂するには2カ月ほどかかりますが、その治療計画があれば問題ありません。 ちょっとしたことで急に豹変するワンちゃんは、どこかで刷り込みが影響している可能性が高いので、こうした本格的な治療が必要です。「依存性のある薬はちょっと……」と思うなら、まずはしつけが上手なドッグトレーナーさんに“スイッチの解除”を相談するとよいでしょう。その際、どういうときにスイッチが入るのかをしっかり伝えることが重要なので、前後の状況をメモしておくことをお勧めします。それでも改善しなければかかりつけ医に分離不安症について相談するとよいと思います。 (カーター動物病院・片岡重明院長)