「S&P500」や「全世界株式」の分散ツールに、米国中小型株式「S&P1000」の魅力
日興アセットマネジメントは、ネット専用のルール通りに運用(トレース)するファンドシリーズ「Tracers」に8本目となる新ファンド「Tracers S&P1000インデックス(米国中小型株式)」を11月12日に新規設定する。10月25日から当初募集が始まった。当初取り扱い販売会社は、SBI証券、マネックス証券、楽天証券だ。同ファンドは、国内で初めて米国中小型株インデックス「S&P1000」に連動するインデックスファンドになっている。同ファンドの特徴や活用アイデアについて、日興アセットマネジメント商品開発部バイスプレジデントの金澤拓也氏(写真)に聞いた。 ――「Tracers S&P1000インデックス(米国中小型株式)」は、米国の中小型株に特化したインデックスということですが、中小型株インデックスを設定する狙いは? 「こんなのほしかった」を実現することをめざす「Tracers」シリーズで8本目のファンドになりますが、当ファンドは米国に上場する中小型株式1000銘柄で構成された「S&P1000指数(配当込み、円換算ベース)」に連動することをめざす、日本で初めてのインデックスファンドです。 そもそも国内において米国の中小型株を対象としたインデックスファンドは、ほとんどないというのが現状です。ところが、米国では「S&P1000」を構成している指数(「S&P中型株400」、「S&P小型株600」)に連動するETFは、残高が合計で数十兆円規模に達する人気銘柄であり、中小型株に大きなニーズがあります。日本でも潜在的なニーズは小さくないと考えました。 また、中小型株は、大型株と比較すると利下げ局面で優位なパフォーマンスをあげてきたという経験則があります。この9月に米FRBが利下げに踏み出したことは、中小型株への注目度が高まるタイミングになると考えました。 当社では5月に「Tracers S&P500トップ10インデックス(米国株式)」という米国の超大型株10銘柄で構成される、いわば集中投資のファンドを出しました。今回は、新たな分散投資の選択肢として時価総額でS&P500の下に位置するファンドを出すことにしました。 ――「S&P1000」の過去の値動きの特徴は? 大型株を対象とした「S&P500」と比較してのパフォーマンスの違いを教えてください。 1999年1月を100として、2024年8月末まで月次で指数の推移を追うと「S&P1000」は1300程度で約13倍になり、「S&P500」は800程度と約8倍です。長期でみると中小型株の指数である「S&P1000」の方が高いパフォーマンスを残していることがわかります。 よく「小型株効果」などといわれるように、市場の注目が行き届かない中小型株は割安に放置されがちで、投資機会が眠っていると考えられます。また、中小型株には創業からの期間が短い企業も多く、大きな成長余力を残しているという楽しみがあります。企業の成長フェーズにおける大きな変化を捉えられることができるのも中小型株投資の大きな魅力の1つです。 ここ数年は大型ハイテク株が優位な状況は続いていますし、「マグニフィセント・セブン」といわれるような超大型株は実際に業績も良く、企業内容が良いことが株高を支える要因にもなっています。一方で、相対的なバリュエーションを見ると、中小型株よりも大型株の方が割高と言われており、この状況の逆転が起こる可能性も無いとは言い切れません。投資家の方々のご判断、お考え方によって「S&P500トップ10インデックス」や「S&P1000インデックス」をご活用いただければと思います。 ――上記のパフォーマンスの特徴を踏まえると、現在の環境下で当面のパフォーマンスの見通しは? 過去の景気循環にあてはめて考えると、金利が低下に向かって景気が上向きになる局面で中小型株のパフォーマンスは好調でした。一般的に中小型企業には借入金が大きな企業が多く、利下げにより借入金利負担が低減するというメリットがあります。その他にも様々な要因があると指摘されています。 2024年9月にFRBが政策金利を0.5%利下げし、インフレ抑制のために続けてきた高金利政策を転換したことが、今後の市場に大きな影響を与えるものと考えられています。今後も利下げが継続していくものであれば、「S&P1000」が代表している中小型株が優位な展開になる可能性もあるのではないかと考えます。 ――「S&P1000インデックス」の活用のイメージを教えてください。「S&P500」以外にも「米国債」、「全世界株式(オール・カントリー)」など、他の主要なインデックス等との組み合わせなどで、効果的な分散効果が得られる組み合わせは? 「S&P500」や「NASDAQ100」、あるいは、「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」のような、近年人気の高いインデックスは、全て大型株のインデックスです。これらを持っておられる投資家の方々は「大型株」に投資している状況にありますので、「企業の規模」分散のための投資手段の1つとして「S&P1000」はご検討いただけると思います。 「S&P1000」の上位には時価総額3兆円程度の企業が名をつらねています。米国市場では、大型株と中小型株の境目はそのあたりの時価総額ということになります。日本では時価総額が3兆円もあれば、大型株に分類されるのですが、米国の規模感では中小型株に分類されるのです。「S&P1000」を活用することで、大型株インデックスだけではアクセスできない規模の企業にアクセスすることができます。 また、この指数の特徴としてセクター(業種)の分散もあげられます。「S&P500」はITの比率が大きいのですが、「S&P1000」ではITは10%以下で、資本財、金融、一般消費財などにきれいに業種分散されたポートフォリオになっています。「S&P500」や「NASDAQ100」などに投資していて、ITセクターへの投資比率が高くなっている方においては、セクター配分を調整するツールとしてもご検討いただけるファンドになっていると思います。 米国債とも基本的には逆相関の関係にありますので、米国債と併せ持ちしていただくことのメリットもあると思います。この場合は、ポートフォリオの期待リターンをどの水準に置くのかという観点で、組み合わせ方を考えていただくことになると思います。債券を組み入れることによって期待リターンの水準が下がって、価格変動率(リスク)は下がるという関係になります。 当ファンドだけに100%投資していただいても結構ですが、どちらかと言えば、既に保有されているファンドとの組み合わせなどで、リスク分散のツールとしてご活用いただく性格が強いと思います。 当ファンドの信託報酬は年0.0975%(税抜き)です。この他に、米ETFに投資する場合、ETFの運用に関する費用が年率0.03%~0.06%かかる見込みです。中小型株1000銘柄に投資するファンドとして可能な限り低コストに抑えて提供します。ぜひ、分散投資の一助としてご検討ください。
ウエルスアドバイザー