ドイツのショルツ首相、信任投票が否決される 来年2月に解散総選挙へ
ドイツ連邦議会で16日、オラフ・ショルツ首相の信任投票があり、反対多数で否決された。これにより、総選挙が前倒しされて来年2月23日に実施される見通しとなった。 信任投票はショルツ氏が求めたもので、否決は織り込み済みだった。ショルツ氏は、早期の総選挙実施が与党の党勢回復の最大のチャンスだと計算していた。 ドイツでは先月、3党連立政権が崩壊。ショルツ氏は少数派政権を率いる苦しい立場に置かれ、事実上レームダック(死に体)状態となっている。 ショルツ氏はこの日の信任投票に先立ち、「私たちの国の政治進路を決める」のは有権者だと述べた。 投票の結果、賛成207票、反対394票、棄権116票だった。賛成票は主に与党・社会民主党(SPD)の議員が投じた。 信任投票が否決されたことで、総選挙は当初予定されていた来年9月より前に実施されることになった。 ドイツでは経済が行き詰まり、西側各国も世界的危機に直面していることから、来年9月まで総選挙を行わなければ、政府は有権者から無責任とみなされかねない状況となっていた。 世論調査では、中道左派の与党SPDは支持率で低迷し、他党に大きく引き離されている。フリードリッヒ・メルツ氏が率いる保守派のキリスト教民主同盟(CDU)が、政権復帰する見通しとなっている。 この日の投票に先立つ討論では、ショルツ氏は総選挙が国の新たな方向性を示す機会になるとし、国防などへの「大規模」な投資を呼びかけた。一方、メルツ氏は、さらなる借金は若い世代の負担になるとし、減税を約束すると訴えた。 ■こうなるまでの経緯 ショルツ氏が自らの内閣を解散させるため、否決が予想された信任投票に打って出たことを、独メディアのビルトは「神風」攻撃のようだと評した。 この方法は、ワイマール時代にみられた政治的不安定を避けることを目的に、戦後の近代ドイツの創設者たちが考案。近代ドイツの歴代首相が5回使い、ゲアハルト・シュレーダー元首相も2回使用した。 ドイツの連立政権の崩壊は、国の財政をめぐる対立に端を発している。SPDと緑の党は、ウクライナ支援や主要インフラプロジェクトの資金を調達するため、厳しい債務規制の緩和を目指した。 だが、クリスティアン・リントナー財務相がこれをブロックした。財界寄りのリベラルな自由民主党(FDP)の党首を務めるリントナー氏は、債務削減を優先させたのだった。これにより、リントナー氏は解任され、連立政権は崩壊した。 ドイツの政党政治システムは細分化が進み、議会にはかつてないほど多くの政党が存在している。新進の政治勢力は過激さを増している。 極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は2017年の総選挙で、得票率12.6%で初めて連邦議会の議席を獲得した。2021年には10.4%に落ちたが、現在は世論調査で20%近い支持を集めている。 (英語記事 German Chancellor Olaf Scholz loses confidence vote)
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