社会現象になった平成ドラマ、最高傑作は?珠玉のベスト(1)革命的な面白さ…社会現象を巻き起こした作品は?
「降る雪や 明治は遠くなりにけり」ー。俳人の中村草田男は、昭和6年にこの句を詠んだ。令和6年となる今年、改めて過去の時代を振り返るならば、さしずめ「ポケベルや 平成は遠くなりにけり」(字余り)といったところだろう。今回は、平成を代表するドラマ5本をセレクト。普遍的な面白さを誇るラインナップを紹介する。第1回。(文・司馬宙)
『東京ラブストーリー』(1991、フジテレビ系)
原作:柴門ふみ『東京ラブストーリー』 脚本:坂元裕二 演出:永山耕三、本間欧彦 出演:鈴木保奈美、織田裕二、有森也実、江口洋介、西岡德馬、中山秀征、伊藤美紀、千堂あきほ 【あらすじ】 帰国子女の赤名リカは、愛媛から上京してきた同僚の永尾完治に想いを寄せていた。しかし、完治の想い人は高校時代の同級生の関口さとみだった。 そんな中、完治の同級生の三上健一が、街中で偶然リカと邂逅。4人は中を深める。 【注目ポイント】 月曜夜9時には街からOLが消える―。かつて、世間にそう言わしめた番組枠があった。フジテレビ月曜9時のドラマ枠、通称「月9」だ。 陣内孝則・浅野ゆう子主演の『君の瞳をタイホする!』(1988)や中山美穂主演の『君の瞳に恋してる!』(1989)など、数々のヒットドラマを輩出してきた本枠は、いわゆるトレンディドラマの主翼を担ってきたドラマ枠だった。 しかし、90年代にはいり、バブル経済が崩壊すると、フジテレビも新機軸の模索を迫られるようになる。そんな中制作されたのが、この『東京ラブストーリー』だった。 原作は、“恋愛の巨匠”といわれた柴門ふみの同名漫画。主人公の赤名リカを鈴木保奈美、永尾完治を織田裕二が演じる。 「カーンチ、セックスしよ!」。そんな視聴者の度肝を抜くセリフを言いながら、あっけらかんと完治にアプローチするリカ。男女雇用機会均等法の成立から5年が経っていた当時、誰もがリカの姿に「新しい恋愛ドラマヒロイン」の機運を感じたはずだ。 しかし、結局完治はリカを振り、高校の同級生だったさとみを選ぶ。自分を振り回し、自由奔放に生きるリカよりも、自分を引き留め続けるさとみを選んだのだ。 さとみを演じた有森也実によれば、本作は「脱・トレンディドラマ」を目指して作られた作品だったという。 従来、トレンディドラマといえば、バブル期の都市に生きる男女の華やかな恋愛模様を描くのが定石だった。しかし、本作では、どちらかというと不器用な人間の純愛が描かれている。恋愛描写がよりリアルなのだ。 そして、小田和正が歌う主題歌「ラブ・ストーリーは突然に」も忘れてはいけない。ドラマのクライマックスで文字通り「突然に」流れるこの曲は、ドラマの盛り上がりに花を添えている。 なお、本作で一皮むけた「月9」は、『101回目のプロポーズ』(1991)『ひとつ屋根の下』(1993)『ロングバケーション』(1996)『やまとなでしこ』(2000)『HERO』(2001)とヒット作を連発。一時代を築いたことは、多くの人が知るところだ。 (文・司馬宙)
司馬宙