「リン」がカシミアリメイク「ア ラブムーブメント」と協業 LAで見出した一点物の可能性
「マックスフィールド」での限定アイテム発売には前段に別のストーリーがある。「リン」は今夏、米国ロサンゼルスのセレクトショップ、「ルームメイツ(ROOM MATES)」で初の海外ポップアップを開催し、コラボアイテムもそこに向けて準備を進めてきた。同ポップアップではほかに、「リン」が得意とするバンブーやオーガニックコットン、ペットボトルリサイクルポリエステル素材を使ったオリジナルアイテムを扱った。そのポップアップを開催中に、2人は即アトリエに入り、大久保デザイナーによるリサイクルカシミアのボディに、川島デザイナーによるペットボトル由来のリサイクルポリエステルのチュールを使用しアレンジを加えた、$2,400(約35万円)のブルゾン4点を手作業で製作した。 「マックスフィールド」のバイヤーに仕上がったコラボアイテムの写真を送ると即日でオーダーが入り即納品。納品翌日には3点売れるという猛スピードの展開だった。川島デザイナーのインスタグラムでは、糸と針を持ち仕上げてゆく様子を残しており、デザイナーとして作る喜び、それが売れる喜びが伝わってくる。
日本では得られない、店頭での手ごたえ
この結果にはLAというマーケットの特性も関係ありそうだ。川島デザイナーは、ポップアップで接客にあたり、一見客の反応に「驚いた」と振り返る。店を訪れるのは地元の人、エンターテインメント業界関係者やツーリストなどで、その多くがウェルネス志向で環境問題にも関心を寄せたという。「再生素材やサスティナブルな取り組みを説明すると、興味を示してくれて、初めて見るブランドでも購入してもらえた」。売れ筋は、朝夕肌寒いLAならではの長袖ニット。「日本では得られない予想以上の反応と成果だった」と手ごたえを感じた。 その手ごたえは、日本でモノづくりをしながら感じていたジレンマと対照的だ。「リン」は、女性らしいシルエットなどが特徴で、素材にこだわる。しかし、生地メーカーが打ち出す環境配慮型素材にオーダーを入れても「量産しなくなった」と度々キャンセルになり、オーガニックコットンを望むもテキスタイルデザインのバリエーションは乏しいと感じてきた。欲しい素材が手に入らず、進む先が見えづらくなっていたタイミングで見えたLAで「一点物」の可能性だった。
「長くデザイナーをしてきて、仕事の進め方がルーティーンになっている。新しい生地を買って、服を作って売る、その仕組み自体を見直すタイミングなのだろう。ヴィンテージや古着を大切に循環させ1点ものの価値を再認識することが、地球環境を守る一番の近道かもしれない。いろいろな方面から可能性を探り、モノづくりの根本を変えてみようと思う」。今後「リン」とはレーベルを分け1点ものに関しては「ユキミ.K(YUKIMI.K)」として活動していく予定で、「ア ラブ ムーブメント」とのタッグで一点物を持って世界のセレクトショップを巡回する企画も構想中だ。