カギは「インスタ映え」インターン関学生が寿司の新メニュー開発
本格的寿司料理に「かわいさ」盛り込む
阪急塚口駅前に立地する同店は地域を代表する有力店ながら、現状に甘んじてはいない。創業者から3代目世代にあたる岡本博幸社長、剛志専務取締役兄弟を中心に、ベンチャー型事業承継で伝統に新たな風を吹き込む。 尼崎ゆかりの近松門左衛門を顕彰する華やかな太巻き寿司「近松巻」や、イスラム教徒の戒律に沿って特別に調理された「ハラルすし」を開発。新たに関西学院大学と連携し、女性を中心とするニューファミリー層の顧客獲得をめざし、女子インター生を受け入れた。 「完成したメニューを見て、素晴らしいなあと思った。私たち寿司屋関係者には、固定概念がある。お寿司は握って出す、巻いて出す。お客さまには完成したかたちでお出ししなければいけない。しかし、インターン生は体験型という寿司の新しい食べ方を提案してくれた。お客様ご自身に手巻きのプロセスそのものを楽しんでいただくという発想は、私たちにはできなかった。インター生のがんばりに感激しています」(岡本社長) インスタ映えする「かわいさ」という価値観を、本格的な寿司料理に持ち込んだのも革新的だろう。職人は頑固のイメージが強い。しかし、同店ではむしろ、かわいさを追求するインターン生たちの強い思いを、職人たちがしっかり柔軟に受け止めた。 和食の神髄である日本庭園の情景を醸し出す立体的な器づかい。刺し身は切ったままの直線ではなく、花びらに見立てた盛り付けに。対話を重ねて専門的な知識や技法をさりげなく導入し、品格あるかわいさの実現にこぎつけたという。 「想像していた以上に社会で働いている方々は深く考えておられ、ジレンマの中で最善策を見つけ出すことを知って、かっこいいなと思いました。何をしようとしても阻むものも出てくる。阻むものも大切で、どちらか一方だけを取ることができない状況下で、答えを追い求める難しさを痛感した。自分自身が未熟であることを気づかされ、謙虚さを学ぶことができました」(加茂さん) インターン研修は修了したものの、つながりは途切れない。同店では「四季を結ぶ」をテーマに、春バージョン以外にも旬の食材を使った四季折々のメニューを考案する方針だ。メニュー開発に欠かせない食材情報などを、引き続きインターン生が調査して同店へ報告する役割を担っていく。詳しくは同店の公式サイトで。 (文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)