日産「X-TRAIL(エクストレイル)FCV」国内公道試験の開始を発表。2年後には100万円/月でリース販売を開始【今日は何の日?12月10日】
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日12月10日は、日産自動車のSUV「エクストレイル」をベースにした燃料電池車「エクストレイルFCV」が国土交通大臣の認可を取得し、国内公道走行試験を開始すること、また2年後には、限定リース販売することを発表した日だ。 TEXT:竹村 純(JUN TAKEMURA)/PHOTO:三栄・モーターファンイラストレーテッド 日産・エクストレイルFCVの詳しい記事を見る ■燃料電池車エクストレイルFCVが公道走行試験を開始 2002(平成14)年12月10日、日産自動車が燃料電池車「X-TRAIL(エクストレイル)FCV」の国土交通省大臣認定を取得し、国内の公道走行試験を開始すると発表。日産のFCEVは、先行するホンダ「FCX」とトヨタ「クルーガーFCHV」に対抗する狙いがあったと推察される。 ベースのエクストレイルはアクティブさを強調したSUV FCEVのベースとなったエクストレイルは、2000年11月にアウトドア派の若者をターゲットにしたSUVとしてデビュー。先行して登場したトヨタ「RAV4」とホンダ「CR-V」よりも、ややアクティブなイメージをアピールした。 スタイリングは、直線基調のボクシーなラインや強靭なイメージのバンパー、立体的で大きい角型ヘッドライト、リアライトで構成。モノコック構造のボディに4WDを備えた乗用車をベースにして、街乗りでもオフロードでも快適に走れるように作り上げられた。 パワートレインは、2.0L直4 DOHCのNA&ターボの2機種エンジンと4速ATおよび5速MTの組み合わせ、駆動方式はFFと4WDを用意。4WDは、“オールモード4×4”と呼ばれる電子制御4WDであり、一般的なアウトドアの用途では十分な走破性を発揮した。 エクストレイルは、200万円台という低価格の魅力もあり、ライバルのRAV4やCR-Vを抑えて、2001年から国内SUV販売台数トップの座に10年間君臨するという大ヒットモデルとなったのだ。 国土交通大臣の認可を取得したエクストレイルFCV 日産が本格的にFCEVの開発を始めたのは、1990年に入ってから。1999年には、ステーションワゴン「ルネッサ」をベースにした“メタノール改質式FCEV”「ルネッサFCV」を開発した。エタノール改質FCとは、メタノールをタンクに供給し、タンク内のリフォーマー(改質器)を用いて水素を生成し、その水素を使って発電する方式。システムが複雑で効率も低いことから、現在は水素を高圧タンクに圧縮充填する“高圧水素式FCEV”が主流となっている。 エクストレイルFCVは、高圧水素ボンベを搭載し、燃料電池とリチウムイオン電池を組み合わせたハイブリッド方式を採用。水素は、燃料タンク位置に搭載された高圧水素タンクに350気圧に圧縮して充填、リチウムイオン電池は床下に搭載された。 出力58kWのモーターをエンジンルームに搭載して前輪駆動で走行し、最高速度は125km/h、航続距離200km超を達成。燃料電池スタックは、米国“UTC Fuel Cells社”製の最高出力54kWの固体高分子型が使用された。 これらの技術を集結させたエクストレイルFCVは、2002年の12月のこの日、国土交通大臣の認可を得て国内公道走行試験をスタートさせたのだ。 2004年に限定的なリース販売をスタート 公道試験で様々な課題を抽出しながら、X-TRAULの改良が進められた。 2003年モデルでは、高出力モーターの採用によって、最高出力が2002年モデルの約1.5倍の85kWとなり、最高速度は145km/hに達した。航続距離は、運転効率に優れた燃料電池スタックと、コンパクトで冷却性能に優れた出力密度の高いリチウムイオン電池の採用により、1.75倍の350km以上と大幅に改善した。 また、このリチウムイオン電池は従来使っていた円筒型ではなく、新開発の薄型ラミネート型セルを採用しため、室内のスペース効率が大きく向上した点も大きな進化だ。 そして、2004年3月エクストレイルFCVの2003年モデルの1号車がコスモ石油に納車された。コスモ石油は、日産とともに「水素・燃料電池実証プロジェクト」に参画しており、当該車両を導入することで水素供給インフラ技術の開発や関連した様々な知見を得ることを目指した。 さらに同年4月には、エクストレイルFCVは神奈川県と横浜市に納入され、100万円/月の限定リース販売を始めた。その後もエクストレイルFCVの進化は続き、2005年モデルでは自社開発の燃料電池スタックに変更し、高圧水素タンク圧力も700気圧に上げて、航続距離は500km超まで改善された。 ・・・・・・・・・ 日産は、FCEVの開発を積極的に進めると公表していたが、2018年に突然FCEV開発計画の凍結を発表した。トヨタとホンダが、将来に向けたカーボンニュートラル戦略でEVとFCEVの両方を推進することを掲げている一方で、日産からはFCEVの具体的な話は2024年12月現在も聞こえてこない。 毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
竹村 純