適度な風格の「プアマンズ」ベントレー オースチン・シアライン ヴァンデンプラ・プリンセス(2)
適度な風格を求める人に理想的なモデル
ヴァンデンプラ・プリンセスは、細かな改良を何度も受けている。1950年にプリンセスIIがリリースされ、1953年にはフロントグリルの異なるプリンセスIIIへ交代。最高速度161km/hを誇る、プリンセスIV(DS7)が1956年に提供された。 【写真】適度な風格 オースチン・シアライン ヴァンデンプラ・プリンセス 同時期のモデルたち (116枚) ホイールベース3353mmのプリンセス・リムジン(DM4)は、1952年に登場。北ロンドンに構えたヴァンデンプラの工場で、1968年まで週2・3台のペースで製造が続いた。 合計3238台以上がラインオフし、ショーファードリブンのリムジンとして、充分な成功を収めたといえる。ベントレーやアルヴィスに並ぶ魅力はなかったかもしれないが、政府や冠婚葬祭関連での需要は小さくなかった。 ロングホイールベースを活かし、定員は最大8名へ対応。信頼性が高く、内装は上品で装備は充実。適度な風格を求める人にとって、理想的なモデルになった。 ヴァンデンプラは、エアコンとパワーステアリングをオプション設定。ロールス・ロイス社製のセミ・オートマティックも選ぶことができ、4速コラムMTの操作の煩わしさからドライバーを開放した。 セレクタライドと呼ばれる、調整式ダンパーも用意。スライディング・ガラスによるキャビン・ディバイダーや、フロントフェンダーのフラッグポール、無線電話などの装備も可能だった。 クロームメッキのウインドウフレームが採用されたこと以外、モデル末期まで見た目に大きな違いはなかった。4灯ヘッドライトと、1枚もののフロントガラスへ置き換えられた程度だ。
4.0Lのオースチンとヴァンデンプラの代表例
1953年から1967年にかけては、キャビン後方がオープンのランドレーも合計14台作られ、ジャマイカやマルタ、オーストラリアなどへ届けられた。ウガンダの大統領も、メルセデス・ベンツ600へ乗り換えるまで、公用車にしていた。 今回ご登場願った2台は、4.0Lのオースチンとヴァンデンプラの代表的な例だろう。EX 7931のナンバーで登録された、アイボリーとブラックのツートーンは、A125型オースチン・シアライン。1953年に登録され、現オーナーはジョナサン・リード氏だ。 1974年に乗られなくなり、1980年代半ばにジョン・カミンズ氏が発見。レストアへ着手されるが、仕事を完了させたのは甥のコリン・カミンズ氏だった。仕上がりは見事で、現存するシアラインの中で、当時から最も美しい1台だったという。 リードが購入したのは3年前。彼はこの他に、シアラインを2台所有している。「父は以前から、シアラインの懐かしい話を聞かせてくれました。それが、強い関心を抱いた理由です」 他方、プリンセス・リムジン(DM4)は、シャーウッド・グリーンとブラックのツートーンに塗られ、葬儀社の社用車として初登録。その役目を終えるとオーナーが変わり、レンタル・リムジンとして多くの人を運んでいる。 1984年に、現オーナーのデビッド・グッディ氏の父が、ヴァンデンプラを専門に扱うクラシックカー・ディーラーで購入。20年ほど前まで、結婚式用のレンタル・ウェディングカーとして活躍した。今でも、その姿が維持されている。