ベントレー・ベンテイガ 詳細データテスト 上質で広い 動力性能も操縦性もハイレベル 文句なく快適
はじめに
ベントレー・ベンテイガEWBは全長5.3m、重量2.6tで、テストするトップグレードのミュリナーは25万8630ポンド(約5043万円)という値付けだ。これは単にベントレーのベストセラーをロングホイールベース化しただけのクルマではない。 【写真】写真で見るベントレー・ベンテイガとライバル (16枚) 後席ドアは、標準ボディより18cm長い。さらに、快適性を高めるポスチュラル・アジャストメント・テクノロジーや、ロールス・ロイスのようなボタン式ドアクロージャーを採用した。それ以外にも、10年近く前に登場した高級SUVにはいくつかの有意義な変化があったものの、大きく変わったと思えるようなものはない。 とはいえ、キャビン後部の贅沢さや広さを高めたことで、このEWBはかつて6.75Lユニットを積む最上級サルーンとして君臨したミュルザンヌの精神的後継車にもなった。牛16頭分ものレザーを内装に用いたサルーンの退役は2020年だが、間違いなく現代のベントレーにおけるフラッグシップだったモデルだ。 その不在がほかのモデルに悪影響を与えることはなかったが、ラインナップ全体にオーラのようなものが欠けていたのも事実だろう。このEWBはその抜けた穴を埋め、ドライバーだけでなく後席に座るVIPの要求を満たそうとするものだ。その課された役割と価格に見合うクルマであるのか、吟味してみよう。
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
SUVではあるものの、EWBの普通ではないプロポーションは、背の高いステーションワゴン的なシルエットを描いている。全長5305mmというベントレー最大のサイズは、だいたいロールス・ロイス・カリナンと同じだが、全高は100mmほど低い。 ほかの高級車のロングホイールベース版ほど違和感はないように見えるが、よく見れば後席ドアが伸びているのがわかるはず。ホイールベースは2995mmから3175mmに伸びている。両ドアを開けた際の幅は4400mmで、ロールス・ロイス・スペクターに次ぐ広さだ。 それ以外、EWBの外見は通常のベンテイガとほとんど変わらない。異なるのは、グリルとホイールのデザインくらいだ。とはいえ、ロング化に伴い、ボディは大きく変わり、アンダーフロアは完全新設計されたと、ベントレーは説明している。 またEWBには、ベンテイガ初の後輪操舵が搭載され、全長が伸びながら、回転サークルは通常モデルより小さくなった。関連性の強いアウディSQ7には採用されていたこの技術が、これまでベンテイガに導入されなかったのは何故か。2017年にベントレーのチーフエンジニアは、自社のクルマに積むには「まだ熟成が足りない」と述べている。そのときから改善されたのだろうが、街乗り中心のユーザーからすればもっと早く対応してほしかったところだろう。 改良版ベンテイガはエアサスペンションを装備するが、EWBは専用チューンとなる。とくに5~20Hz帯が優れていて、競合車に比べセカンダリーライドの振動が最大27%低減しているという。ロング版となれば、乗り心地関連の洗練度向上も期待される。ベントレー史上最高の乗り心地さえ求められるところだ。 エンジンは、アウディ開発のV8で、4.0Lで550ps/78.5kg-mを発生する。トランスミッションは、ZF製の8速ATだ。ベントレー最上級モデルには、6.0LのW12のほうがふさわしかったと思うかもしれないが、残念ながら生産終了してしまった。もっとトルクがほしいなら、近く登場すると目されるハイブリッドバージョンを待つといいだろう。