金融政策が行き届かないのはなぜ?再検討すべきは、帰属家賃問題と物価統計
金融政策が行き届かないと嘆く前に、物価統計を精査すべき
こうした背景を踏まえると、日銀が今後どこかのタイミングで「帰属家賃」など金融緩和の効果が及びにくく、かつ下落のきつい品目を除いたベースの物価指標を重視する姿勢を打ち出してくる可能性があるでしょう。 特にこの帰属家賃は下落の寄与度が大きく、上述のような様々な問題が指摘されていますから、それを除くハードルはあまり高くなさそうです(ちなみに欧州の物価統計にはそもそも帰属家賃が採用されていません)。また最近は、日銀が日本の公共料金の上昇が極めて鈍いことに着目して、その特殊性を分析しています。「公共料金を除けば、物価は上昇基調にある」とのメッセージを発したいのでしょう。 こうした動きが加速すると「除く○○ベース」でみた物価が、いつの間にか2%に近づくという展開も考えられます。そうなれば、これまで金融市場が全くと言って良いほど注意を払ってこなかった「金融政策の出口」がにわかに意識される可能性があり、金融市場の波乱を招くリスクが高まります。ただ、こうした問題を考慮しても、歪みが生じている物価統計を金融政策の目標に採用して、そうした下で空前の規模で金融緩和を推し進めることには違和感があります。べき論で言えば、「除く○○ベース」など幅広い尺度の物価統計をみて、日本の実態に適した金融政策を採用すべきでしょう。 【連載】いちばんわかりやすいマーケット予想(第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一) ※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。