海外遠征を経て到達 白川未奈が歩んだ東京ドームへの道
「クラブビーナスを世界に広めたいと思ってやってきたことが、名前こそ変わったけど、そのつづきができていると確認できました」
そして、12・11カンザスシティーで白川とマライアがシングルで激突。マライアの王座に白川が挑戦する図式だった。試合は、第13代王者マライアが6度目の防衛に成功。前王者トニーのお株を奪うストームゼロがフィニッシュだった。 「トニーからベルトを取ったときもストームゼロでした。彼女のトニーに対するアレ(気持ち)じゃないですかね」と、白川。では、マライアの白川に対する気持ちはいったいどうなっているのだろうか。 「すでに日本でのマライアではなく、すごく変わっていました。と言っても、日本でクラブビーナスに入ってAEWへの道ができたのも、彼女がスターダムに来たからだと思うんですよね。(無名だった)彼女を引き上げられたことは、やっぱりうれしいです。その反面、追い抜かれたことにもなるので…。私、日本でも(マライアにシングルで)負けてるので2連敗なんです。十分に背中を押したんだからと考えれば、今回は売られた喧嘩だけど、対角に立つべくして立ったのかなって。マライアはね、きっと私のことを愛しすぎているんですよ。愛憎ですね、完全に(笑)。王者になってトップに立ったけど、あせりもあると思う。私が行ったことで危機感というか、“We want MINA”の流れもあるので、それでああいう行動に出たんじゃないかな。トニーへの裏切りは、愛ではないんです。あれは、トップに立つため。でも、私には愛情が残っていると感じてる。いや、信じてる。だっていまでも『ミナ愛してる』『ミナ大好き』みたいなのずっと言ってるから(笑)。ホントにないわって思うけど、結果的に私がこのモンスターを作っちゃったんですよね。このモンスターを退治するのも自分じゃなきゃできないのかなって思います」 タイトルマッチ後も、白川の遠征はつづいた。12・15ロングビーチではジョニー・ロビーとのシングルマッチ。レイラ・グレイ同様、ジョニーもニュージャパンアカデミーのレスラーで、気持ちよく試合ができたという。そしていったん帰国すると、すぐにまたイギリスに飛んだ。RPW王座防衛戦のためだ。試合は12月21日、ロンドン・ヨークホールでおこなわれ、前王者ダニー・ルナとのリマッチだった。この試合は白川が勝利し、2度目の防衛に成功。試合後にはダニーが求める形で握手が成立した。 「ダニーとは闘って絆が生まれましたね。でもその後、奇襲されたんです」 白川とダニーを襲ったのは、元王者アレックス・ウィンザーを中心とするカットスロートコレクティブというユニットだった。アレックスは白川がRPW王座奪取の際に譲り受けたサウスサイド女子王座ベルトの最後の王者。RPWブリティッシュ女子王座を「統一」とした張本人でもある。 「突然襲われ、なんだよってところで終わっちゃったんですけど、私って別の国の選手からもおいしいと思われるようになったのかなって。それもまた、今回の遠征の収穫のひとつでしたね」 海外での試合の積み重ねが、東京ドームにつながったと言って間違いはないだろう。そして海外での経験が、日本での試合にも大いに役立っている。 「前回(8月)は自分の名前を広めたい一心でした。今回は、クラブビーナスを世界に広めたいと思ってやってきたことが、名前こそ変わったけど、そのつづきができていると確認できましたね。さらに今回は、闘いの幅がまた広がった感じがしました。日本だと同じ選手との対戦がどうしても多くなるけど、海外に出るとやったことのないタイプの選手が次々と出てくるんですよね。それで闘いの幅が広がったと思います。また、海外で1万人の観衆の前で試合をしたとして、その裏ではテレビなどでその試合を見ている人が観衆の何倍も何十倍もいるんだっていうことを意識するようになりました。会場以外のお客さんも意識して闘う。そこが一番大きかったかなと思います」 そして帰国後、白川は1・5東京ドームで長い花道を歩きリングに立った。しかも元WWEスーパースターとのタイトルマッチで、自身も王者として同じ立場でモネと向き合ったのだ。この試合で、白川はドームの観衆はもちろん、その背後にいる世界中の視聴者を意識して闘っていたに違いない。試合でも日本では見せなかった新しい技を公開。結果的には敗れたものの、「次は勝つ」という新しい目標が見つかった。今回の東京ドーム参戦は、最終ゴールではない。1・4&5の2日間、ドーム参戦が夢で不可能を可能にする重要さを言葉にした女子選手が多かった。白川もまた、そのひとり。東京ドームが、白川未奈(ミナ・シラカワ)にとって新たな起点となったのである。 インタビュアー:新井宏
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