小説家夫婦がケンカをしたら…。口達者だった吉村昭と津村節子が、12年かけて培った夫婦の絆とは?
『星への旅』で太宰治賞を、『戦艦武蔵』や『関東大震災』で菊池寛賞を受賞した吉村昭と、『玩具』で芥川賞を受賞した津村節子。小説家夫婦である2人は、どのようにして結ばれ人生を共に歩んだのか、そして吉村を見送った後の津村の思いとは。今回は、小説家2人が夫婦生活を続けられた秘訣ついてご紹介します。 【写真】鮮やかな衣装が素敵な津村節子さん * * * * * * * ◆口達者な小説家夫婦だった 「若い頃は、夫婦ゲンカとかいろいろあって大変だったようですが、30代、40代と年を重ねて、二人とも大人になって落着いていったんじゃないでしょうか」 と司(長男、吉村司)は両親の歴史を振り返る。 井の頭公園のそばに終の棲家を建てたのは吉村が42歳のときで、その頃には収入も安定し、暴力沙汰のケンカにまでは至っていない。 言いくるめて結婚したほどだから、吉村は口は達者。津村も負けてはいない。ああ言えばこう言うという口ゲンカに変わっていったが、それも次第に減っていった。 そのあたりのことは吉村が書いている。 〈男と女が全くちがった種属であることに漸く気づいたのは、最近になってからである。同じ人類には違いないが、霊長目オトコ科、霊長目オンナ科とわけられるべきであろう。
◆結婚してから12年間はケンカをしていた 結婚してから12年間、私たち夫婦はよく飽きもせずケンカをしてきた。私の方からいえば、1プラス1は2というような当然すぎるほど当然なことを口にしているのに、妻の方は1かける1は1じゃないの、などとおよそ見当ちがいなことを口にして反撃してくる。つまり、互に全く会話が通じあわないのである。男と女が、犬猫の差ぐらいに異なった種属であるからなのであろう。〉(『月夜の記憶』講談社文庫) だから意見が合わなくて当然だった。意見が一致することはない相手と、ケンカすることがばかばかしくなったというのだ。 吉村の随筆集に『蟹の縦ばい』という作品がある。そのタイトルは、男の目が現在、過去、未来と縦の線に向けられるのに対し、女性の目は現在のみで、それも自分の現在位置から横へと向けられているという吉村の観察による。 蟹のように横ばいする女性の視点に対して、男は「縦ばい」なのだ。これも男と女の違いで、夫と妻というのは永遠に理解し合えないものだという。その諦観の上に立てば、 〈喧嘩しても、いつかは仲直りするのだから、ここらでいい加減にやめようということになる〉。互いに長所短所を認め合い、暮らしていこうとなる。
【関連記事】
- 芥川賞・太宰治賞受賞の小説家夫婦、新婚時の生活は?婚約中に発した吉村昭の「おれは無一文同然だ」発言が事実通りで…
- 小説家夫婦の馴れ初めとは?「結婚したら小説が書けなくなる」とプロポーズをいなす津村節子に、何度も口説き続けた吉村昭
- なぜ男性は40歳前後、女性は50・60代で「お腹」にくるのか…筋トレでの体重増は良い太り方?科学がつきとめた「中年太り」の真実
- 名取裕子「パニック障害と更年期障害を発症、支えは愛犬だった。14歳で母を亡くし料理は得意。ぼっち歴52年も、おいしいものを食べる時間があれば」
- <炭水化物抜き><ロカボ>大ブームの低糖質ダイエットで「やせた」は勘違い!中年太り解消にさほど効果なし、長期的には体重が増えやすくなる可能性も…