鈴木清順の脚本直しの詳細を 認識できるブックレットが秀逸 ―『鈴木清順生誕100周年記念 シリーズ ブルーレイBOX』
監督鈴木清順生誕百周年を記念し、彼の日活時代の作品からセレクトされた作品13タイトル(SP2本を含む)が2個のブルーレイボックス其の壱『セイジュンと男たち』其の弐『セイジュンと女たち』として発売中。ラインナップは前者が「殺しの烙印」「けんかえれじい」「野獣の青春」「俺たちの血が許さない」「勝利をわが手に-港の乾杯-」、それにSP「素ッ裸の年令」と「らぶれたあ」(SPは2本でディスク1枚)で6枚、後者が「河内カルメン」「肉体の門」「春婦傳」「関東無宿」「裸女と拳銃」で6枚となっている。各々に特典ディスク(DVD1枚)付属。さらに各ボックスには全52ページのブックレットが付いている(後述)。 収録作品を概観すれば分かるようにボックス「其の壱」には清順アクション映画の代表作の数々が奇妙な歌謡曲映画と共に並び、ボックス「其の弐」には野川由美子の全主演作をはじめとする女優陣の個性際立つ作品が収められている。
清順といえば男性アクション。これはあまりに正しい反応であろう。「殺しの烙印」が第79回ヴェネチア国際映画祭クラシック部門で最優秀復元映画賞を受賞した事実から分かるように、その濃密なモノクロ映像は「アクションに奉仕するアクション」というコンセプト共々、現代アクション映画の祖型と見なすのが可能である。「野獣の青春」の過剰なまでにスタイリッシュな美学も世界的に注目を浴びている。しかし清順映画の奥深さはこうした男性スター映画によってのみ示されるものではない。そこに気づかせてくれるのが「其の弐」の野川由美子主演作、ということになる。戦時中、戦後初期、同時代、と様々な状況下に生きるたくましいキャラクターを描いて、まさに六〇年代女優アクション映画の精髄と呼びたい。特典についても触れておこう。映像面では故・青山真治監督との貴重なトークイベントの模様が収録(「其の弐」)される他、評論家上野昻志によるインタビューもたっぷり。そしてブックレットには各収録作品に対応した鈴木清順所有の最終脚本の一部が掲載されている(SPは脚本が見つからず未掲載)。