日本人がじつは知らない、政府の「南海トラフ巨大地震対応策」その気になる中身
2011年3月11日、戦後最大の自然災害となる東日本大震災が発生した。あれから13年、令和6年能登半島地震をはじめ何度も震災が起きている。 【写真】日本人が青ざめる…突然命を奪う大災害「最悪すぎるシミュレーション」 しかしながら、これから起きうる大きな自然災害(首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山噴火)について本当の意味で防災意識を持っている人はどれほどいるだろうか。 もはや誰もが大地震から逃れられない時代、10刷ベストセラーの話題書『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれ、また、防災に必要なデータ・対策が1冊にまとまっている。 (※本記事は宮地美陽子『首都防衛』から抜粋・編集したものです)
南海トラフ巨大地震で国はこう動く
南海トラフでの巨大地震は約100~150年の間隔で発生している。直近が1944年の「昭和東南海地震」(M7.9)と1946年の「昭和南海地震」(M8.0)であることを考えれば、いつ巨大地震が襲来しても不思議ではないタイミングといえる。 では、南海トラフ巨大地震が襲いかかってきたとき、政府はどのような対応を見せるのか。国の中央防災会議幹事会が2015年3月に決定し、2023年5月に再改定した「南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画」の中身を見ていこう。 基本的には首都直下地震における対処行動と同様に、国家の総力を挙げた応援活動が展開される。 応援部隊の派遣規模は警察が約1万6000人、消防は約2万1000人に上り、自衛隊も約11万人投入される。国土交通省の緊急災害対策派遣隊「TEC-FORCE」は約1360人派遣され、航空機約490機、船舶約530隻も投じられる。 医師や看護師らで構成する災害派遣医療チーム「DMAT」が陸路や空路で参集するのも同じだ。
「首都防衛策」に匹敵する応急対策活動
国は地震発生直後の被害推計を踏まえて応援部隊派遣や物資支援の地方別割合を算定し、域内の警察・消防機関の勢力に比して甚大な被害が想定される「地震重点受援県」を特定する。 静岡、愛知、三重、和歌山、徳島、香川、愛媛、高知、大分、宮崎の10県を想定しており、緊急輸送ルートの確保や救助・医療、物資・燃料の提供などに乗り出す。被災地からの要請を待たずに「プッシュ型」で支援するのも、首都直下地震における応急対策活動と同様と言える。 被災府県の拠点には発災後4~7日間に必要な救援物資を輸送する計画で、具体的には飲料水46万立方メートル、食料1億800万食分、毛布570万枚、乳児用粉(液体)ミルク42トン、簡易トイレ9700万回分、トイレットペーパー650万ロール、生理用品900万枚などを想定している。 関東から九州にかけてさまざまなダメージが生じ、経済被害が東日本大震災の約10倍にも達するという重要性を踏まえ、国家を挙げた応急対策活動のレベルは「首都防衛策」に匹敵するものだ。 ただ、この「南海トラフ巨大地震作戦」にも「穴」がないわけではない。一つ目は、南海トラフ巨大地震が東側と西側の時間差で連続発生する可能性があることだ。 一度目の「半割れ」で甚大な被害が生じた場合でも、二度目の巨大地震に備えなければならない各自治体の警察や消防などが地元を離れることができるのかは疑問が残る。