育成4選手の抜てきに見たソフトバンク小久保監督の手腕 山川加入で打線は厚み増すも不安要素は先発か【評論家の視点】
小久保監督1年目のソフトバンクは春季キャンプを終え、オープン戦に突入。4年ぶりのリーグ優勝、日本一奪回を狙うシーズンに向け、29日の開幕まで1カ月足らずの間に仕上げを図っている。今回は、阪神、ダイエーなどで投手として活躍した西日本スポーツ評論家の池田親興氏に、春季キャンプを視察しての印象やチームの現状などを語ってもらった。 ■「ちょっとジーン」森唯斗が甲斐拓也とハグ【写真】 ◇ ◇ ◇ 【池田親興氏の視点】 小久保監督が就任して初めての春季キャンプ。私の故郷でもある宮崎でしっかり見せてもらった。監督が代わると選手も「ここでやらなきゃ」と気合が入るもの。チームも新しく生まれ変わる。それぞれのモチベーションの高さは十分伝わった。 チームの一番強い時期を支えた「レジェンド」は昨季まで2軍監督を2年間務め、若手を把握。その中から川村、仲田、緒方ら育成4選手をA組(1軍)に抜てきしたのはさすがだ。若手のやる気に火を付け、チームも活性化させた。 千賀(メッツ)や甲斐らを輩出した育成選手は現在60人近いが、近年活躍したのは藤井ぐらい。小久保監督も選手のモチベーションの重要性を痛感したのだろう。抜てきした選手が期待に応え、結果でアピールしているのも素晴らしい。 山川も目を引いた。誰もが「よく練習する」と認めていたし、宮崎のファンの拍手も心強かったはずだ。あとは結果をどう出すか。まいた種は自分で刈り取るしかない。求められるものは高いが、キャリアハイの成績を突き詰めてほしい。 それにしても山川の加入は大きい。一発のある右打者はチームの課題だった。これで打線はものすごく厚みを増した。昨季2冠の近藤と最多安打の柳田、本塁打王3度の山川…。故障明けの栗原も負担が少ない打順で使える。相手投手にはたまらない打線だろう。 1番に周東を固定できるかも重要。どんな形でも塁に出れば、相手の脅威となる。昨季3割7厘の出塁率を3割台半ばに上げたい。周東がはまれば、2番に近藤や柳田が入る超攻撃型打線も選択肢になる。 一塁を山川と争う中村晃も状態がいい。新加入のウォーカーの外野守備は期待できないだけに、外野も守れて左の代打も託せるベテランの存在は大きい。スタメンの場合も、強力な中軸の後に勝負強い打者がいるのは頼もしい。 投手陣はどうか。救援陣は充実の布陣。オスナが最後に控えるのは非常に大きい。中継ぎはモイネロが先発に挑み、田浦と津森が故障などでやや出遅れたが、松本裕、藤井、又吉ら実績のある顔触れがそろう。 現役ドラフトで加入した変則左腕の長谷川も面白い。2月25日の韓国・斗山との練習試合で3者連続三振を奪ったように、球速以上に打者の手元で球が来ているし、スライダーの切れもいい。嘉弥真(ヤクルト)の穴を埋めることも可能だろう。 一方、先発は不安が残る。小久保監督はホーム開幕戦に衰え知らずの和田を指名したが、彼も43歳になった。年齢を考えれば、本来は間隔を空けながら投げさせたい。開幕投手の有原の次に、和田の名前が挙がる点に現状が表れている。 昨季の先発陣は規定投球回に誰も届かず、1試合の平均投球回(5・54回)はリーグ最短。救援から転向したモイネロや大津は未知数の部分があり、石川は出遅れ気味だ。スチュワート、東浜、大関、板東らを含め、オープン戦でどう形をつくれるかが鍵を握る。 他球団では、3連覇中のオリックスの福良ゼネラルマネジャーが「300投球回をどうするか」と頭を痛めていた。チームを去った山本(ドジャース)、山崎福(日本ハム)が昨季投げた計294回1/3は簡単には埋まらない。昨季は2位に15・5ゲーム差をつけたが「300投球回」との差し引きでどうなるか。混戦を予想する一番の理由だ。 昨季最下位の日本ハムは先発に山崎福が加わり、後ろには昨季覚醒した田中正がいる。万波、野村を擁する打線にも米大リーグ通算108本塁打のレイエスらが加入。台風の目になる可能性は十分にありそうだ。
西日本新聞社