<春に輝け>’20センバツ 花咲徳栄 チーム紹介/下 投手・守備 コンバートで選手層厚く 冬練習、エースに自信 /埼玉
2019年8月11日、阪神甲子園球場。約4万4000人の熱気に包まれたグラウンドで、高森陽生投手(2年)は試合後、他の選手に支えられながら泣き崩れていた。初戦の明石商との対戦で、3年生エースに代わって七回裏から登板。決勝打を許し、敗戦投手となった。高森投手は「あの悔しさがあるから今の自分がある」。岩井隆監督も「あの試合を忘れたら高森じゃない」と話す。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 切れのある直球を武器に安定した投球を見せる左腕は、新チームでエースとなった。夏の敗戦以来「自分の課題に集中して取り組める」と、夜の自主練習にも積極的に励む。 19年秋の公式戦では6試合に登板し、3試合で完投。関東大会準々決勝の山梨学院戦でも8回を完投して被安打4、自責点1と好投したが敗れ、「負けたのは自分のせい」と悔しさをにじませる。 体作りに取り組む「冬練習」が始まる12月からは新しいフォームを試した。2カ月半のトレーニングを経て蹴る力や腰の回転の速さが増し「成果が出てきた」と自信をつける。リーダーとして投手陣全体をとりまとめる役割も担う。「監督と同じぐらい責任のある立場。周りの投手ができなかったら自分のせいでもある」。甲子園では「プレッシャーをはねのけるようなピッチングをしたい」と力を込めた。 一方、守備陣は昨秋以降、大幅な守備位置や選手の入れ替えがあった。井上朋也主将(同)は外野手から三塁手へ。一塁手の中井大我選手(同)は捕手へ。秋の大会では打撃でたびたび見せ場をつくった浜岡陸選手(1年)は三塁手から遊撃手へ。岩井監督は「選手の層を厚くしたかった。守備は順調。コンバートした選手も良い動きをしてる」と話す。 浜岡選手は冬練習期間中、安定した内野守備が持ち味の南雲壱太選手(2年)から指導を受けた。「足の動かし方の基本から教えてもらった。守備が変わったのは南雲さんのおかげ」と話す。 主に二塁を守り、新チームで内野守備陣のチーフを務める田村大哉選手(同)は「秋は守備のミスが負けにつながっていたが、(冬練習が終わり)1年生も動けるようになってきた」と成長を実感する。井上主将も「守備でミスをしたら終わり。守備のリズムから攻撃につなげたい」と、その重要性を語る。 自慢の打線を中心に毎年夏、県内を勝ち上がってきた花咲徳栄。久しぶりの春のセンバツで輝くためには、冬練習で一回り成長した守備陣の動きもカギを握りそうだ。【平本絢子】