辻希美、YouTubeで「世間の目が変わった」 ブログにはない“生活感”に好評価が集まる理由
コロナ禍をきっかけに、一気に増加した女性芸能人のYouTubeチャンネル。テレビやSNSとはまた別の魅力を発揮しており、パブリックイメージとは異なる面を楽しむことができる。 【写真】辻希美の撮り下ろしカット YouTube配信に力を入れている女性芸能人に、動画投稿を始めたきっかけや今後の展望について聞く連載企画「YouTube with her」。 第5回は、2019年に開設された『辻ちゃんネル』にて、家事や子育ての様子を赤裸々に発信し、チャンネル登録者数150万人以上(※2024年5月現在)を誇る辻希美を迎えた。 いまや4人の子どもに囲まれ、“先輩ママ”として多くのママタレントたちから尊敬されている辻希美。YouTubeを始めてから「世間からの評価が変わってきた」という。子どもたちとYouTube の関係性や、企画の考え方など、たっぷりと話を聞いた。 ・“キラキラママタレント”から、親近感のある存在に ――YouTubeを始めたのは2019年5月でしたね。なぜ始めようと思ったのでしょう? 辻希美(以下、辻):ちょうど4人目の子が生まれて3ヶ月後ぐらいのことでした。もともとYouTubeをあまり見ていなかったんですけど、子どもたちはすごく好きで。「ママもやってみなよ!」と言われることがちょこちょこあったんです。それで出産後、外に出る仕事もガッツリできなかったタイミングで「子どもたちも言ってたし、やってみようかな」と思ったのがきっかけです。 ――最初は、メイク動画などが多かった印象です。 辻:そうですね。YouTubeについてあまり知らなかったので、とりあえず定番のコンテンツを発信していました。メイク動画とか、モーニングルーティンとか、バッグの中身紹介とか……。正直、いまよりもオンモードというか、キメキメな感じで撮っていたんです。 ――いまは生活の延長線上ともいえるような企画が多い印象ですが、“キメキメな感じ”からそうなったのはなぜでしょうか? 辻:YouTubeを自宅で撮影するとき、最初は「背景をキレイにしてから撮ろう」と思っていました。でも、どうしても生活感は隠しきれなくて、そのまま配信してしまったんです。そうしたら、視聴者の方から「そういうところにすごく親近感が湧く」という好意的なコメントをもらうようになったんです。それを見て「あんまり考えすぎないでやってもいいのかも」と気持ちが切り替わり、どんどん私生活のなかでもカメラを回してみようと思えました。 ――「背景をキレイにしてから撮ろう」というのは、ブログなどのSNSを投稿するなかで「ちゃんとしなくちゃ」と気にかけていたからなのでしょうか? 辻:そうですね。もともとはなにをやってもなにかしら言われる立場だったので、かなり気をつけていました。それに、ブログやインスタなど写真がメインのSNSでは、すごくキラキラしているように見られてしまって。料理の写真をアップしても「本当に作ってるんですか?」と言われちゃうこともあったので。 だから、YouTubeを始めて最初の1年くらいは気を張っていましたね。発言も気をつけていましたし、背景もなるべく作り込んでいました。 ――でも、実際に寄せられたのは予期せぬ反応だった、と。 辻:本当に予想外でした。そもそも4人目を妊娠したくらいのころから、世間の目が変わってきたように感じていたんですね。親近感を持ってもらえたことで、すごく優しいコメントが増えてきて。 そういう声に甘えて、どんどん楽しくやらせてもらうようになりました。「SNS=自分が気を張る場所」だったのが、YouTubeを始めたことで、ただただ楽しい場所になっていったんです。 ・「子育てに正解はない」から、ハウツー動画はやらない ――ここ数年だと、片付け動画や料理動画など、日常の延長線上のような企画が多いイメージです。ありのままの姿を見せることに抵抗はありませんでしたか? 辻:もともとはありました。うしろで子どもがガチャガチャ騒いでいるし、部屋も汚いし……。でも、見ている方が「その汚さがリアルでいい!」と言ってくれたことで、ありのままを出そうと思えるようになりましたね。 正直、いまとなっては「動画を撮ろう」と思ってカメラを回しているわけでもないんですよ。カメラを回すこと=私の家事に対するやる気スイッチをオンにしなければいけないので。いろんな意見はありますが、いまは「撮らなきゃ」っていうよりも、「みんな聞いて!」っていう気持ちでカメラを回していますね。だから、割と企画が似ちゃうことも多いんです。 ――たしかに、そう言われると……! 辻:気づいたら毎回ハンバーグを作ってるか、衣付けしてますもん(笑)。もはや視聴者の方にもネタとして受け取られているので、いいんですけどね。私のなかで簡単というか、手抜きであることがバレています。私自身も、動画を見ながら「これ、前にアップしなかったっけ?」って思うこともあります(笑)。 ――子育てや家事に関するYouTube動画では、育児のお役立ち情報や自分の経験をハウツーのように語る方も多い印象です。辻さん自身、一番上のお子さんは高校生。もはや先輩ママ的な存在ともいえますが、そういったハウツー企画は見当たりませんね。 辻:考えたこともなかったかもしれないです。というのも、私自身、あんまりハウツー動画を見ないんですよね。子育てに正解はないですし、人それぞれ違うので、自分の実体験は話すものの「こうしたほうがいい」と断言できることは少ないと思っているんです。 それに、子育てって予想外なことだらけですからね。私自身、ひとり目を育てるときは、育児本通りにいかないことがたくさんあって。それがストレスになっちゃったんです。だから、それ以降は「育児本はあくまでも目安」と考えるようにしています。その通りに進むことが正解ではないし、自分を追い詰めることも嫌だったので。 それよりも、私は大家族YouTuberさんの動画をめっちゃ見ます! 「なかよしだいかぞく」や「漆ちゃんfamily」とか。 ――そうなんですね! なぜでしょうか? 辻:大家族のお母さんを見ているだけで「自分なんてまだまだ」「もっとがんばらなきゃ」って思えるというか、パワーをもらえるんです。ご飯の量もすごいですからね! だから、自分自身の動画を通して「学びになった」というよりも、私が大家族の動画を見てそう思うように「パワーをもらえた」という方がいたほうが、うれしいのかもしれない。 ・「子どもの顔が写り込んでいないか」時間をかけて入念にチェック ――いまは週に3本ほどアップされていますが、動画はどのくらいストックしているのでしょうか? 辻:ストックが直近1ヶ月分を切ると焦りますね。家でカメラを回している日常動画が多いので、チェックする部分も多いんです。子どもの顔や学校関連のものが反射していないか、映り込んでいないか、細かくチェックしています。絶対にミスできないので、なるべくチェックの期間は長めに取っているんですよね。 ――お子さんを出す・出さないの線引きや、気をつけている点はありますか? 辻:思春期の長女に関しては、一切出さない……というか、自分から出てこないです。なので、いないときに撮影するようにしています。もし声が入っているのも嫌なときは音声も切っちゃいますし、その子の状態に合わせて編集しているんです。 ――それは、動画をチェックしているときに、お子さんにも確認するのでしょうか? 辻:確認しますし、カメラを回しているときも、子どもは「いま、撮影しているんだな」とわかっているので、機嫌がいいときや入りたいときは自分から入ってきますけど、そうじゃないときはスッといなくなります。子どもの意思が最優先で、無理強いしないことにしていますね。 YouTubeが仕事であることは子どもたちも理解はしてくれているし、リスペクトしてくれているので、協力体制ではあるんですよね。反抗期のときも「もうやめて」とか「なんでいま、回してるの?」と言われたことはありませんでした。 ・切羽詰まって爆発したときは「みんなで一回泣く!」 ――お話を聞いていて、辻さんのYouTubeの活動はかなり順調そうだと感じました。 辻:大変だったこともありましたよ。たとえば、基本的に動画編集は専門のスタッフにお願いしているんですが、4人目が生まれて半年後に「私も編集してみたいな」と思い立って、自分で編集していた時期。赤ちゃんを抱っこしながら、夜な夜な編集して……。今はもう絶対できないなって思います。 あとは、気づかないうちに数字に追い込まれて、爆発しちゃったことも……。そのイライラが子どもたちにも伝わって、家の中がピリピリしちゃいましたね。 ――その切羽詰まった時期から解放されたのは、どういうタイミングですか? 辻:正直、解放はされていないと思います。いまも、切羽詰まったときはスタッフのみんなも同じ状態のことが多くて、一回みんなで泣くようにしていますもん。ただ、それをきっかけに冷静に話せるようになったり、協力して分担できるようになったりしてきたのは大きいかなと。まだまだ試行錯誤しながらやっていますけどね。 ――ほかのインタビューでは、ブログがメインだったころはアクセスランキングを見てメンタルが落ち込んでしまうこともあったとお話しされていました。YouTubeこそ数字が明確に出ますが、そこは気にならないですか? 辻:めっちゃ気にします。自分がアップした動画の、直近の再生回数ランキングのトップ10を見て、直近の動画が10位だったり、10位にも入っていないときは「うわーっ」て。 ただ、自分でもわからないことだらけというか、少し前まで再生回数が伸びていたものが伸びなくなることも多いですし、お蔵入りレベルのものが伸びることもあるので、とりあえずめげずに投稿は続けていますね。 ――マインドとしては、全部の動画をヒットさせようという感じではなく? 辻:そうですね。最低でも週に3回アップするというところは守り続けたいなと思っていますが、動画の質を下げてまで守ろうとは思っていないです。爆発的にヒットするよりも、見ている方が「頑張ろう」と思ってくれるようなものを撮っていきたいですね。 ――最後に、YouTubeは撮影から配信、コメントをチェックするところまで、多くの工数が伴うと思います。どういう瞬間に一番やりがいを感じますか? 辻:幅広い方に見てもらえているなって実感した瞬間ですかね。この間も、外出先でブレザーを来た学生さんが泣きながら歩み寄ってきてくれて。「お母さんと一緒に、ずっと(動画を)見てます」って言ってくださったんです。 あとは5歳くらいの子に「あ、YouTuberだ!」って言ってもらったり(笑)。「モーニング娘。時代を知らない若い子たちにも、自分を知ってもらいたい」というのは、YouTubeを始めたときのひとつの目標でもあったので、それが徐々に感じられているいまは、本当にやってよかったなって思います。
於ありさ