“親子げんか”で里親抹消 10年以上育てた息子が突然他人に… 三重・名張市
そして、一時保護から約3週間後。三重県からある通知が届きました。大樹さんと拓実さんを松山さんに預ける「里親委託」が解除されたのです。さらに、里子を受け入れるために必要な「里親登録」も取り消されました。突然の出来事に、妻は10日ほど食べ物が喉を通らず、水も飲めないほど衰弱してしまいました。 県内の児童養護施設で生活することになった大樹さん。当時、施設から松山さん夫婦に宛てた手紙には、切実な思いが綴られていました。 <大樹さんが松山さん夫婦に宛てた手紙> 「俺は松山の子です。お母さんがいつ倒れるんじゃないかっていう心配が頭から離れません。1秒でも早く帰りたいです」
サッカーに打ち込んでいた大樹さんは、プロになることを夢見て、サッカーの強豪校への進学を目指していましたが、施設での生活が続く中、志望校を変えることを余儀なくされたといいます。家庭から引き離され、1年間を棒に振ってしまったのです。
児相と家裁で分かれる判断 13歳の弟は施設から戻れないまま…
親子の縁が絶たれてから約1年たった頃、一筋の光が差し込みました。 家庭裁判所が、松山さん夫婦と大樹さんが養子縁組を結ぶことを許可したのです。その際にまとめられた調査報告書には「(大樹さんが)同居中のエピソードを具体的かつ嬉しそうに述べた。その陳述内容は(大樹さんの)真意が反映されたものと言える」と記されていました。1年の時を経て、ようやく親子での生活がかなったのです。 一方、松山さんが養子縁組後に入手した三重県の弁明書では「(虐待に関して)経験したものでないと語れない具体的なエピソードを話しており(中略)供述には信用性があります」と、松山さんによる心理的虐待があったとして、「明確な根拠に基づいた適法な処分」だと主張。今も、松山さん夫婦の里親登録は取り消されたままです。
そのため、まだ元通りになっていないことがありました。大樹さんと一緒に一時保護された拓実さんは現在13歳。養子縁組を結ぶには親権者の同意が必要な年齢のため、今も施設での生活が続いています。里親登録を取り消された松山さん夫婦は、拓実さんと話すことすらできません。大樹さんは、拓実さんのサッカーのユニホームを部屋に飾り、時折、思い出すように一人でアルバムを眺めているといいます。