「高校教師」から”アパホテル地面師事件”の「なりすまし役」へ…80超えの老人が地面師グループと繋がりをもった「やくざ風の男たちが集う」巣鴨の穴場
手渡しで10万円
「私は還元水に関する本を書いていましてね。粟屋(啓子)さんと、その話で気が合ってお金の貸し借りが始まったんです。といっても、細かい小金のやりとりで、僕が借りて返すみたいな。そんな付き合いが始まったのが、巣鴨の『伯爵』という喫茶店でした。あそこには、ああいう類の人が集まっています」 粟屋啓子という人物は秋葉紘子の手下だと見られている。秋葉に命じられ、松本を犯行グループに引き込んだとされる。もっともこの人物もまた犯行との因果関係を立証できず、とがめなしで終わっている。 巣鴨駅周辺を歩いてみると、「伯爵」は簡単に見つかった。レトロな空気が流れる純喫茶だ。メニューには、ピザトーストやナポリタンスパゲティなど懐かしい軽食もある。都心ではスターバックスやドトールコーヒーに押され、昔ながらの喫茶店はすっかり減ってしまったが、さすが高齢者の原宿といわれるだけあって、巣鴨伯爵はずいぶん賑わっていた。高齢者だけでなく、やくざ風の男たちが、紫煙を吐きながら書類を広げて真剣な顔をして話をしている。 松本によれば、ここにはアパ事件にかかわったブローカーや事件師たちが数多く出入りしていたという。そうして話に出てきた粟屋に誘われ、なりすまし役を引き受けることになったというのである。 もっとも松本は、秋葉の下で動いた粟屋とは密接にかかわっているが、当の秋葉とは面識がある程度だと頼りなく話した。 「粟屋さんと会うといっても、前はふた月に一度くらいでしょうかね。それからときどきお金を借りるようになってね。この件でも交通費として3回くらいは小さな金をもらいました。一回2000円くらいで、多くても6000円くらい。それで僕は何が何だか、よくは覚えていないのです。全部終わったときには、たしかに10万円受け取りました。手渡しでしたね」 『報酬10万円でアパホテル事件に加担した「元高校教師」は、裁判時には記憶が断片的に...なりすまし役の“認知症”まで見越して犯行計画を立てる地面師グループの「黒幕」たち』へ続く
森 功(ジャーナリスト)
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