田畑で窃盗、年3000件 農機、農薬も標的 繁忙期は泣き寝入りも
農作物の盗難など田畑での窃盗事件が年間およそ3000件に上ることが、警察庁の調査で分かった。農作物だけでなく、農家を狙った窃盗事件は、農機や農薬などあらゆる資材で発生している。警察は、被害品の数が多い場合は転売狙いの可能性もあるとみており、警戒を呼びかけている。 【表】数千個も…被害が大きい窃盗事例 警察庁は2020年から「田畑」での窃盗事件の分類を開始。20年の認知件数は3225件、21年は同3111件、22年は同2963件に上る。各年とも件数の約9割を占める区分が、農作物を含む「非侵入盗」の「その他」。農作物が狙われやすい収穫期は、農家も忙しく警察に通報しないままのケースもあり、実際の被害はさらに多いとみられる。 各県警に被害の目立つ農作物を尋ねたところ、特に「ブドウ」は茨城や山梨、福井、広島など、挙げる県が多かった。他にもリンゴ(秋田)やナス(京都)、キュウリ(宮崎)など幅広い作物が挙げられた。一度にネギ1000本やスイカ400個など、大規模な窃盗も起きている。 茨城県では今年3月に農薬の窃盗事件が続発。行方警察署によると10、11日にかけて、サツマイモの農業法人の作業場から土壌燻蒸(くんじょう)剤およそ80缶、時価164万円相当が盗まれた。隣接する鉾田警察署管内でも15~18日にかけて、倉庫に保管されていた土壌燻蒸剤30缶、殺虫剤計54袋など時価117万円相当が盗まれた。 他にも、日本養蜂協会によるとミツバチは23年度に山梨や岐阜、鹿児島の各県で窃盗被害があった。転売や自家用目的とみられるという。農水省によると、トラクターなどの特殊自動車の窃盗事件は23年で135件に上る。 複数の県警によると、農薬や農作物が大量に盗まれるケースは転売目的の可能性がある。一度に大量に運び出すには時間がかかるため、犯人は下見をすることも考えられるという。不審な人や車を見かけたら通報する、収穫物や資材を農地に放置しない、不定期で巡回するなどの対策を呼びかける。
日本農業新聞