目線の“低さ”がポイント? じわじわ広がる「みまもり自販機」の正体
目線の高さで撮影すると顔が隠れづらい
「みまもり自販機」は商品見本の部分に小型のカメラを搭載し、24時間にわたって自販機の周囲を撮影している。カメラは最新型のCMOSセンサーと明るいレンズを採用しており、夜間でもカラーでの撮影が可能だ。 街中にある防犯カメラは電柱や街路樹に取り付けられるのが一般的で、基本的には人の目線よりも高い位置から撮影している。そのため、傘を差していたり、帽子をかぶっていたりすると顔が見えづらくなってしまう。 その点、目線の位置にカメラが搭載されている「みまもり自販機」は、そうした状況でも人の顔が隠れづらい。また、利用者がカメラがあることに気付きやすく、犯罪抑止につながりやすい。自販機の内部にカメラが設置されているため、いたずらをされづらいメリットもある。 撮影した画像はキリングループが管理しており、約4週間保存している。周囲で事件や事故が起きた際は、警察からの依頼に応じて映像を提供しているという。 「警察の方からは『みまもり自販機の映像は一般的な防犯カメラよりも鮮明に写っている』という声が聞かれています。提供した映像が犯人逮捕につながったケースもありました」(馬返氏)
設置を拡大するためのハードルは?
「みまもり自販機」の契約条件は、通常のものとは異なってくる。防犯カメラ費用として、カメラ代やメンテナンス、ランニングコストなど1台当たり約50万円が加算されるためだ。 キリンは防犯カメラ費用を自社で負担する代わりに、通常、契約先に支払っている販売手数料をなし、あるいは少額とする条件で設置している。また、カメラ費用をまかなうために一定の売り上げが見込める場所であることも求められる。 そうした事情があり、既存の自販機を「みまもり自販機」に置き換えるのではなく、基本的に新規の契約先に対して案内をしている状況だ。契約先を増やすのは容易ではない。契約数を増やすにあたり、さまざまな条件面への理解や末永く取り組むための合意形成が一番の難しさだと安藤氏は説明する。 「自販機を収益源と考えている方が多くいるなか、地域の安全・安心のために設置する『みまもり自販機』の目的をご理解いただく必要があります。 また、カメラで撮影されることに対して反対意見が出ることもあります。ただ、映像は当社の人間が常にモニタリングしているわけではなく、要望があった際に警察にのみ開示をする体制です。そうしたご説明を行うため、関係者の理解を得るまでに時間がかかってしまうのが難しさといえます」(安藤氏) 一方で、設置先の自治体からは「費用や手間をかけずに防犯カメラを設置できてありがたい」と、地域住民からは「防犯カメラが設置されて安心できる」と、それぞれ感謝の声が多く届いているそうだ。 キリンは、2027年までに全国に500台設置を目標に「みまもり自販機」の拡大を進めている。行政機関と連携して、防犯に取り組む商業施設や商店街、学校、交通機関などへの設置を進めていきたいという。 (小林香織)
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