日本では自民党総裁選。今こそ観たい『JFK』。アメリカでは大統領選も。心あるリーダーの誕生を祈らずにいられない
◆ギャリソンは諦めない しかし、ギャリソンは諦めない。あまりにも向こう見ずなその行動から目が離せず、私は見るのを途中でやめることができなかった。ある意味彼は、たまたま風車に吹き飛ばされずに済んだ、幸運なドン・キホーテだ。 ではギャリソンは「愚かで向こう見ず?」そう聞かれたら、私は「いいえ」ときっぱり答えるだろう。なぜなら、彼のような人がいなければ、JFK暗殺は「オズワルド単独犯説」のまま、歴史の中に埋もれるしかなかった。 ギャリソンがいたからケネディ暗殺は、「陰謀」だと思われるようになったし、映画『JFK』のヒットを受けて、2029年まで非公開だったケネディ暗殺にかかわる機密情報が2019年に公開されることになったのだ。 映画のクライマックスの法廷シーンでは、そこまでは描かれない。しかし、「自分の子どもがいつかその情報を目にするだろう」と訴えるギャリソンの言葉に私は、鳥肌が立ち、目頭が熱くなった。たとえダブルスタンダードでしかなくても、アメリカには一分の公正さが残されている。それを証明しなくては、「国際社会をけん引するアメリカ」たりえない。情報公開後につくられた『JFK/新証言 知られざる陰謀』の日本語字幕版はネット配信サービスで視聴できるので、興味のある方はぜひ。
◆あなたが国のために何ができるかを考えよう さて、ケネディ大統領自身はヒーローであると同時にスキャンダルにもまみれた人だった。武器商人や共産圏との密約も、勿論あったろう。しかし彼は、「政府に不都合な、国民のための正義」を貫いたから、殺されたのではないだろうか。 最近のWikipediaを見ていて知ったのだが、ケネディは小さいころから病弱で、1947年にはアジソン病という難病と診断されている。それでも重責を担う多忙な議員職を続け、遂に大統領選に挑むころにはすでに、「余命はそう長くない」と診断されていたようだ。 私自身が難病だからと庇うつもりもないが、「死」を意識した時人間は、命がけで「難題」に挑もうとするものだ。誰だって自分の生きた証を残したい。ケネディは、暗殺を覚悟のうえで、アメリカの輝かしい未来のための布石を打ったのだと私は信じている。そんな政治家が権力を国民の利益のために使うなら、その国の政治は変わり、その国はよくなるはずだ。軍事政権や利己的な主権者で国が荒廃するのを私たちは知っている。ならば逆も真実だと私たちは信じていいのではないか。 まずは今回の総裁選での、心ある総理の誕生を祈らずにいられない。ケネディは言った「国があなたに何をしてくれるかでなく、あなたが国のために何ができるかを考えよう」。 私は、「日本という国をよくするために、まず間違いには『NO』といい、よき政治と未来を切望するべきだ。最初から期待しない国民に良い国を作ることはできない」と言いたい。ぜひこの機会に『JFK』ご覧あれ。
さかもと未明
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