「地獄のコースで大逃げを打て」パリ五輪女子マラソン 瀬古利彦氏が20年ぶり金候補に前田穂南を指名
エチオピアとケニアの選手は勝利が至上命令である。そのためにビッグスポンサーがつき、手厚いサポートを受けている。瀬古氏は続ける。 「ビジネス上の争いのプレッシャーに加え、国の威信もかかわっていますから、ますます負けられない。両国のライバル関係はすさまじいものがあります。彼女たちが牽制し合っているスキを突く作戦です。前田選手があれよ、あれよと逃げまくれば面白い」 日本の女子マラソンは’00年シドニーで高橋尚子、’04年アテネで野口みずきと2大会連続金メダルを成し遂げた。20年ぶりの王座奪還なるか、前田の大逃げに注目したい。また、東京大会8位入賞の一山麻緒(27)、将来性を秘める鈴木優花(24)も出場する。 さて、男子は赤﨑暁(26)、小山直城(28)、大迫傑(33)の3選手。瀬古氏は「スピードがあるし、伸びしろを秘めている」と赤﨑のチャレンジ精神に託す。 「でも、神様がいますから」 絶対王者のエリウド・キプチョゲ(39、ケニア)に一目も二目も置く。’19年10月、非公認ながら人類で初めて2時間を切る1時間59分40秒をマークするなど、不動のトップランナーとして君臨している。 「苦しい顔など見たことがない。オーラがあるんですよ、彼には」 現在、’16年リオデジャネイロから2大会連覇中。パリも制すれば、1960年ローマ、1964年東京のアベべ・ビキラ(エチオピア)、1976年モントリオール、1980年モスクワのワルデマール・チェルピンスキー(旧東ドイツ)を追い抜き、前人未到の五輪3大会連続金メダルの偉業を達成する。 39歳という年齢からすると、最後の五輪になるだろう。母国の後輩で2時間0分35秒の世界記録保持者、ケルヴィン・キプタムが今年2月、24歳の若さで交通事故死した。自らの後継者のためにも、マラソンの神様は全身全霊を込めて勝ちにくる。 「正直、アフリカ勢とは差があります。男子は入賞が目標です。3年前、大迫選手が6位と粘ってくれた。次のロサンゼルス大会を含め、先につながるレースをしてほしい。日本がレベルアップするには、結果を出し続ける、という“流れ”が大事ですから」 ジェンダー平等を掲げる今大会は男女のマラソン開催日が初めて入れ替わり、男子が先に走り、女子のレースがフィナーレを飾る。前田が華麗に締めくくり、マラソン王国復活への第一歩を刻むことに期待したい。
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