「地獄のコースで大逃げを打て」パリ五輪女子マラソン 瀬古利彦氏が20年ぶり金候補に前田穂南を指名
パリ五輪の男女マラソンは8月10、11日、いずれも午前8時(日本時間両日午後3時)スタートで行われる。日本陸上競技連盟マラソンリーダーの瀬古利彦氏(68)は「女子の前田穂南選手(28)に最も期待しています。逃げて逃げまくれば、金メダルだってあり得ます」と、日本女子マラソンとしては20年ぶりの快挙を予想した。 「会場がゲロまみれに」…トライアスロン会場・セーヌ川のあまりの汚さにフランス人記者が絶句 今大会はパリ市庁舎をスタート、オペラ座、ルーブル美術館の前を通り、ベルサイユ宮殿付近で折り返すと、エッフェル塔前を過ぎ、皇帝ナポレオンが眠るアンバリッド広場にゴールする42.195キロで競われる。 花の都・パリの名所旧跡を巡るものの、選手には最大高低差156メートルという史上最難関コースが待ち受ける。1984年ロサンゼルス五輪、1988年ソウル五輪に出場、指導者として日本代表の強化、選考に深く関わってきた瀬古氏は「オリンピックは記録より勝負といわれますが、今回のパリは地獄のレースになると思います。私が優勝したボストンマラソンには有名な『心臓破りの丘』がありますが、その比ではないでしょう」と、かつてない過酷なサバイバル戦になると見立てる。 当日の気象条件は気温20度前後、湿度50%前後が予測されるなか、急峻な坂を上るのは苦しいが、それに怯まず果敢に挑み、仕掛けることによって勝機が見えてくる。 「前田選手には思い切りの良さがあります。今年1月の大阪国際女子では中間点過ぎでペースメーカーより前に出て後半は1人で走り、2位でゴールし2時間18分59秒の日本新記録を樹立しました。パリでも15キロから18キロまでの長い上り坂で最初のスパートをかけて、28キロ過ぎの急坂でもう一度スパート、そう、2段ロケットです」 優勝争いの本命は2時間11分53秒の世界記録保持者、ティギスト・アセファ(27、エチオピア)と、東京五輪女王で2連覇を目指すペレス・ジェプチルチル(30、ケニア)の2人。持ちタイムで前田はアセファと約7分の差がある。まともに競り合えば力の違いを見せつけられてしまう。だからこそ、瀬古氏は激しいアップダウンを味方につけ、大逃げの一手に出てアフリカ勢を慌てさせる作戦を授けた。