「子持ち様」という俗語はなぜ生まれた? 誰もが働きやすい社会の実現が急務
「子育ては女性がするもの」という固定概念を捨てる
――子育て世帯と、そうでない世帯の分断が生まれないようにするため、国や行政に望むことはありますか? 上原:経営者の考え方を変えていくために、働きかけをしてもらうことでしょうか。家庭と仕事の考え方はどんどん変化しています。家庭と仕事を完全に分けて男女で役割分担をしていた時代、男女に関係なくみんなが仕事をするようになったけれど役割分担は続いていた時代を経て、今はその役割分担もフェアに変わっている時代だと思います。 個人の意識もだんだん変わってきていて、男性も子育てをしようと思っている人が増えているにもかかわらず、企業側が「女性は育児が大変だから支援する、男性はこれまで通り」ということを続けていると、分断が広がっていくだけだと思うんですよね。 経営者など企業の意志決定者の中で、その意識改革を起こしていく必要があると思うので、そういった発信を国や自治体から積極的に行ってほしいと思います。 ――子育てがしやすい社会を実現するため、私たち一人一人ができることはありますか? 上原:前提として、子育てと働くことを巡るさまざまな問題は、みんなで取り組んでいくべきで、いま子育てをしている女性こそ、「この構造を変えていかないといけない」という意識を持つことが重要だと思います。 「育児も仕事も、自分が我慢してやればいい」と考えるのではなく、次世代にはこう変わってほしいという思いを持って、一歩を踏み出してほしいですね。 また、周囲の人は「女性が子育てするもの」という固定観念を捨てて、会社の上司に制度について相談するといったアクションを起こしていくことだと思います。 そういった積み重ねで社会は変わっていくのではないでしょうか。
編集後記
「子持ち様」問題は、子育てや働くことの意識が変わりつつある時代だからこそ生まれている問題だと感じました。 少子高齢化が課題となっているのに、子どもを持つことによって社会的に不利な状況になってしまうというのは本末転倒ではないかと感じました。 「キャリアと子育ての両立を目指す」 「子育ては夫婦で行うという意識を持つ」 「従業員の働きやすさを追求する」 私たち一人一人の行動や働きかけで、社会全体にこのような意識や考え方が広がることを切に願います。
日本財団ジャーナル編集部