「マイナ保険証」で救急患者の医療情報、病院が同意なしで閲覧可能に
厚生労働省は9日、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」を利用し、意識不明に陥った救急患者らの医療情報を、本人の同意なしに病院が閲覧できるシステムの運用を始めた。処方薬や手術歴などを救急医らが把握し、的確で迅速な治療につなげることで、救命率の向上や後遺症の軽減を目指す。 【図表】従来の保険証とマイナ保険証の違い
現在、マイナ保険証で受診する患者が同意すれば、過去5年間の受診歴や処方薬、特定健診の結果を医療機関は閲覧できる。これらの医療情報は、レセプト(診療報酬明細書)などのデータを活用している。
新システムでは、意識不明や会話が困難などで意思確認ができない場合、医師が救命や回復のために必要と判断すれば、本人の同意なしに情報を閲覧できる。
救急用にまとめた情報も確認できる。直近3か月に限定した受診歴や薬の情報などで、関係学会の助言を得て厚労省が絞り込んだ。
医師は新システムの導入で、患者の医療情報を速やかに把握できる。例えば、血を固まりにくくする抗血栓薬の使用がわかれば、出血しやすい点に注意して治療を進められる。
厚労省は2025年度、マイナ保険証を利用する患者の電子カルテ情報を、医療機関同士で共有する仕組みを導入する方針だ。導入後は、アレルギーの有無や感染症の検査結果も、新システムで閲覧できる。
厚労省によると医療機関や薬局でのマイナ保険証の利用率は今年10月時点で15・67%にとどまっている。